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フェルナンデス欧州7連覇で競技引退。
フィギュア界に刻んだスペインの栄光。 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byGetty Images

posted2019/01/29 11:00

フェルナンデス欧州7連覇で競技引退。フィギュア界に刻んだスペインの栄光。<Number Web> photograph by Getty Images

欧州選手権7連覇を達成したハビエル・フェルナンデス。母国スペインにフィギュアスケート文化を根付かせた功績も大きい。

「日本でユヅルの後に滑った経験が生かせた」

 フェルナンデス、スケート人生最後の競技プログラムがはじまった。

 最初の4トウループにつけた3トウループでステップアウトするも、4サルコウはきれいに成功。後半のフリップが2回転になったのが唯一の大きなミスで、179.75でフリーはトップにたった。

「素晴らしい気持ちです。今日のような演技ができて、すごく誇りに思っています」と演技直後に喜びを語ったフェルナンデス。

 最終滑走だったコリアダは、3度転倒してフリー11位という意外な結果に。3アクセルで転倒したときに氷についた左手首を痛め、その痛みと戦いながらの演技だったという。結局コリアダは総合5位に落ちた。

 フェルナンデスが、2位のアレクサンドル・サマリンを僅差で抑えて7度目の優勝を果たした。エフゲニー・プルシェンコがやはり欧州選手権で7回優勝しているが、7連覇は1935年のカール・シェーファー以来の快挙となる。

 どれほどのプレッシャーを抱えて滑っていたのだろう。

「演技前に、彼(サマリン)がとても良い演技をしたことは歓声でわかった。でも長い間競技に出ていると、どのような状況でもどう対処すればいいか習得するものです。日本でユヅル・ハニュウの後に滑ったという経験は、次に生かせる大きな学びとなりました」と会見でコメントし、羽生ファンが思わぬ貢献をしたことを明かす。

「何かを残すことができたと思いたい」

 人々にどのような選手だったと記憶して欲しいのかと聞かれると、こう答えた。

「ぼくはちょっと変わったタイプの、普通よりも完成度の高いスケーターだったと思ってもらえたら嬉しい。スケーターとはジャンプだけでなく、スケート全体が評価されるものですから」

 そしてこう付け加えた。

「ぼくが、スケート界に何かを残すことができたと思いたいです」

 ちなみに本大会では、スペインのアイスダンスチームが7位と8位と健闘した。一昔前では考えられなかった彼らの成績の伸び方も、おそらくフェルナンデスの活躍に刺激を受けたことが一因に違いない。日本のスケート界もそうだったが、こうして先駆者が1人出ることにより、次の世代が育っていくのである。

【次ページ】 「競技復帰はない」と断言。

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