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大坂なおみとセリーナは再会するか。
誰もが納得する「決着」を全豪で。
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byAFLO
posted2019/01/18 17:30
全豪を順調に勝ち上がる大坂なおみ。セリーナと今大会で対峙することはあるのだろうか。
16歳で出会った憧れのセリーナ。
大坂がセリーナと初めて会ったのは、この時のこと。シャイな16歳は憧れ続けた「アイドル」を目の前にし、セリーナから向けられる質問に、小さな声で答えるのが精一杯だったという。
「どこに住んでいるの? フロリダのフォートローダーデール? だったらご近所じゃない!」
そう言われ、これまで憧れの人がどこに住んでいるか知らなかった、自分の無知を恥じ入った。
一方その頃、内向的な娘と対照的に社交的な父親は、セリーナの元フィットネスコーチのアブドゥル・シラーが大学のキャンパス内に居ることを知り、声を掛けて連絡先を交換した。
それから4年――セリーナのヒッティングパートナーを8年務めたサーシャ・バインが、大坂なおみのコーチとなる。バインは、シラーが「ブラザー」と評するほどに信頼を寄せる相手であり、セリーナのみならずビクトリア・アザレンカや、スローン・スティーブンスら多くのトッププレーヤーのスタッフとして、目的地と夢を共にした同志である。
バインが大坂のコーチになった時点で、シラーが必要なパーツとしてチームに加わるのは、必然の成り行きだった。
トレーニングは強要ではなく教育。
昨年3月にチームに加わったシラーは、ただちに大坂の肉体改造に取り掛かる。ただそれは本人の言葉を借りれば、強要ではなく「教育」だ。
「私は押し付けるのは好きではない。トレーニングや食事でも、なぜそれが必要なのか本人が理解しなくては意味がない。何が勝者と敗者を分けるのかについての、ディベート(討論)やアーギュメント(議論)が重要なんだ」
それはシラーがバインと共有する哲学であり、シラーによれば大坂は「好奇心旺盛で、いろいろな質問をしてくる」のだという。