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超ハイレベルな全日本フィギュアで、
勝負を超えた女子選手達の意地を見た。
posted2018/12/25 17:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
演じられたのは、空前の戦いだった。
同時に、この大会ならではの光景に彩られた時間でもあった。
2018年のフィギュアスケートを締めくくる全日本選手権は、世界でも屈指のレベルとなった。
ハイレベルの大会を成立させたのは、優勝した坂本花織にとどまらない。坂本の228.01点に続き、紀平梨花が223.76点で2位、宮原知子は223.34点で3位、そして三原舞依が220.80点で4位と、実に4名が220点台をマークしたのである。
国際スケート連盟非公認とはいえ、まぎれもなく、日本女子の質と層の厚さを示していた。
坂本はもちろんのこと、紀平、宮原、三原はそれぞれに心に残る演技を見せた。
紀平が見せた演技中の機転。
紀平は今シーズンがシニアデビューの年であるにもかかわらず、グランプリシリーズ2戦そしてグランプリファイナルをも制し、脚光を浴びる存在となった。
今大会で苦しんでいた靴の問題も影響して、ショートプログラムは5位と出遅れたが、フリーはトリプルアクセル2本を成功させるなどして、155.01の高得点を得た。
「どの試合でも集中できるようになったので、ほんとうによかったです」
印象深かったのは、後半に組み入れていた連続ジャンプだ。
予定ではトリプルルッツ-ダブルトウループ-ダブルループの3連続だったが、最初のジャンプの着氷が乱れ、ステップアウトとなる。だがそれをステップアウトのままとせず、オイラージャンプとして切り抜け、そのあとにダブルサルコウをつけたのだ。
オイラージャンプは回転不足となったものの、その機転と冷静さは、あらためて、紀平の力量を思わせた。