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コンサドーレ史に残る奇跡の立役者、
「古川先生」は東洋大監督で奮闘中。
text by
渡辺功Isao Watanabe
photograph byIsao Watanabe
posted2018/12/20 07:30
かつて札幌などに所属した元Jリーガー、古川毅監督(右端)率いる東洋大。インカレ初勝利で部の歴史に新たな足跡を残した。
インカレで待望の初勝利。
12月12日、IPU・環太平洋大学との1回戦は、後半42分に途中出場の荒川勇気(3年)の勝ち越しゴールが決まって2-1。記念すべきインカレ初勝利をあげる。中2日で迎えた2回戦の相手は、鋭いドリブルを武器とする京都内定のMF中野克哉、ガンバ大阪内定の大型サイドバックの高尾瑠を擁する関西学院大学だった。
この日、会場の浦安市運動公園陸上競技場はメインスタンドから見て左から右への強風が間断なく吹き、陸上トラック保護用の人工芝マットが相次いで飛ばされてしまうほど。そのなかで東洋大は、コイントスで勝てたら風下を選び、前半は0-0で終えることを目論んだ。
だが、プランを完遂する目前の43分、マイボールのCKからカウンターを浴びて、先に失点してしまう。
それでも風上に立った後半には、渡辺星夢(しょうむ・4年)の壁の隙を抜いた直接FKと、巧みなステップでシュートコースをつくった野本幸太(2年)の左足ゴールで2-1と逆転。積み上げてきた地力を感じさせた。
「(関東の)後期のリーグ戦では1敗だけ。自分たちより上位(1位~6位)の6チームには、ひとつも負けなかった。関西リーグ2位の相手でしたけど、臆することなくやろうと選手たちには話しました。後半は自分たちらしさを表現してくれたと思います。ただ勝ち切った結果で、自分たちの力を証明できれば良かったんですが……」
試合中も冷静かつ泰然と。
逆転の5分後に、東洋大は同点ゴールを許すと、延長戦の前半終了直前にPKを与えてしまい、これが決勝点。結果は2-3。初挑戦のインカレは2回戦で幕を閉じた。
試合中ベンチで声を荒らげることはなく、微妙な判定に対して大袈裟にアクションすることもない。現役時代のプレーイメージそのままに、冷静かつ泰然と指揮を執っていた古川監督は、試合終了の笛を聞くとテクニカルエリアに立ったまま、身動きすることなく40秒ほど、やはり静かにピッチに視線を送っていた。
「急激に成長して伸びてくれたチームだったので。このチームが今日で試合ができなくなるという現実を、受け止めなくてはいけないのだろうか。そんなことを考えていた時間でした。できるのであれば、最後のところ(決勝戦)まで、彼らのプレーを見ていたかったですね」