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将来性ある選手でタイトルを獲る。
ベルマーレはJの底辺拡大の希望だ。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2018/10/30 11:30
紆余曲折あったクラブの歩み。2018年のルヴァンカップ制覇は、ベルマーレにとって新次元への第一歩となる。
成長できるクラブとの評判。
2012年に曹貴裁がヘッドコーチから監督へ昇格すると、育成力とチームカラーはさらに鮮明となる。
試合開始から試合終了まで全力で戦う。攻守の切り替わりで、相手よりも早く動き出す。ボールの奪い合いで負けない。サッカーの原理原則を徹底的に追求したサッカーは、“湘南スタイル”と呼ばれるようになった。その体現者たる選手たちはハードワークを厭わず、複数のポジションに対応する現代的な資質を備えていく。
J1では残留争いを演じることになるが、J2へ降格してもすぐにまた復帰できるだけの予算、言い換えれば人件費もそれなりに確保できるようになっていた。圧倒的な量と濃密な質を兼ね備えた曹貴裁のトレーニングは、抗いがたい魅力として他クラブの選手さえも惹きつける。「成長できるクラブ」との評判が、Jリーグ全体に広がっていった。
ベルマーレに足りなかったのは、タイトルだった。「選手が成長できるクラブ」としての評価は揺るぎないが、「J1リーグチャンピオン」や「カップウィナー」の称号を得られるとの評価は、残念ながら薄かった。
それだけに、ルヴァンカップ優勝には大きな価値がある。
「湘南みたいに」と思われたい。
'99年からクラブに携わってきた眞壁潔会長は言う。
「ベルマーレにとってはクラブ創立50周年で、'94年のJリーグ参入から25年目の今年に、我々がやってきたことが結果に結びついたのは素直に嬉しいですね。Jリーグの54クラブの一員として考えると、我々のような歴史を辿ってきたクラブがこうして頂点に辿り着くことで、経営に奮闘しているJ2やJ3のクラブの方々が『湘南みたいにやろう、湘南を目ざそう』と思ってくれたら、今回の優勝には価値があると思うんです」
今年4月にライザップグループがクラブ運営に参画したことで、ベルマーレの経営資本はこれまでよりも安定している。とはいえ、日産自動車が主要株主のF・マリノスなどとの比較では、依然として予算に恵まれているとは言えない。