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将来性ある選手でタイトルを獲る。
ベルマーレはJの底辺拡大の希望だ。
posted2018/10/30 11:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
Jリーグの歴史が、変わっていくかもしれない。
10月27日に行なわれたルヴァンカップ決勝で、湘南ベルマーレが横浜F・マリノスを1-0で下した。1994年1月に国立競技場で天皇杯を掲げて以来、実に25年ぶりのタイトル獲得である。
湘南ベルマーレというチームが語られる上で、'99年のクラブ存続の危機を外すことはできない。親会社だった建設会社フジタの資本撤退により、市民クラブとして生まれ変わったのだ。カテゴリーはJ1からJ2へ転落したが、とにもかくにもクラブは残った。
責任企業を持たないクラブは、カテゴリーアップのための補強はもちろん、保有戦力の維持さえままならなかった。予算は限られている。それでもベルマーレがプレゼンスを高めていったのは、フロントと現場がピタリと歩調を合わせ、ありったけの情熱をクラブ全体へ注ぎ込んでいったからである。
高校生でもトップチームで起用。
トップチームの戦力と成り得る選手を自分たちの手で育てるために、アカデミーと呼ばれる育成組織の指導を充実させた。初々しくも眩しい才能の開花を促すために、高校生年代からトップチームで起用することも躊躇わなかった。
浦和レッズへの移籍を経て現在はベルギー1部のシント・トロイデンでプレーする日本代表MF遠藤航は、2010年にベルマーレの一員としてJ1デビューを飾っている。当時17歳だった。
育成力はアカデミーでのみ発揮されたわけではない。2009年に最初のJ1昇格を果たした反町康治監督のもとで、中堅やベテランが再生していく。高校や大学では無名と言っていい存在だった選手も、ベルマーレ入りをきっかけにメキメキと力をつけていった。
「他チームがウザいと思うほど仕掛けていくチームにする」との反町の方向性のもとで、全員が攻守にハードワークするサッカーがベルマーレのチームカラーとなっていった。