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村田諒太、防衛戦へ「ナチュラル」。
ラスベガスの喧騒と本人の静謐さ。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshio Ninomiya
posted2018/10/19 16:00
村田諒太の表情は澄んでいた。場所がどこでも、相手が誰でも、ボクシングはボクシングだ。
ゴロフキンとの話し合いが実現?
この会見の様子を、ダゾーンの中継で解説する元WBC世界バンタム級チャンピオンでジムの先輩である山中慎介が見つめていた。
「ブラントはスーパーミドル級でも戦ってきたので体のサイズはどうかなと思ったんですけど、村田のほうが大きく見えましたね。表情も落ち着いているし、いつもどおりきっちり仕上げてきたなっていう印象を受けました」
ブラントの先にあるビッグマッチとは。
標的は、ずっと対戦を熱望してきたゲンナジー・ゴロフキンだ。9月15日、サウル“カネロ”アルバレスとの再戦で僅差の判定負けを喫したとはいえ、トップオブトップの存在であることに変わりはない。
トップランク社の大物プロモーター、ボブ・アラム氏は会見でゴロフキン側と村田が所属する帝拳ジム側が話し合いに入ることを明かしている。もちろん村田の勝利が絶対的な条件。ラスベガスのファンを熱狂させれば、ゴロフキン戦が現実的な話になってくる。
高揚感をナチュラルに包んでいる。
村田らしい、言葉についての感覚。
村田は日本を飛び立つ前の公開練習で「(試合に向けて)頭が整理されてきた」と言った。ならばどう整理されてきたのか? というメディアからの質問に対し、村田はこう返した。
「言葉って不思議なもので、言っちゃうと崩れたりする。ゴルファーをどうやって崩すか、と言うと“どうやって打つんですか”と聞いて説明させたら、崩れるそうです。そういうスポーツメンタルがある。動きがどうとか言うと、そこに意識が集まってしまう。だから言葉では説明したくない」
ラスベガスで多弁な村田はいない。
きやびやかな舞台で、どんなボクシングを披露するのか。
言葉は要らない。リップサービスも要らない。
リングの上で、村田諒太のボクシングを存分に見せつけるだけである。