プロ野球PRESSBACK NUMBER
「あーっ、ムカつく!」から7年。
西武・秋山翔吾はリーダーになった。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2018/10/01 11:45
9月30日に10年ぶり22度目の優勝が決定。祝勝会では笑顔でビールを浴びせられた。
誰もが野球を語れる環境を作ってきた。
秋山の打撃や守備、走塁、洞察力などの能力が高いことは今さら語るまでもないだろうが、もっとも評価されるべきだと思うのが高いコミュニケーション力だ。
人の意見を聞き、思ったことを口にする。
それは野手に限らず、投手に対しても同様だ。キャンプ中には投手が多く集まるトレーニング場にいて、そばにいる選手に積極的に言葉をかける。
ささいな一言だとしても、たとえば初めて一軍に呼ばれた選手であれば、その場に馴染むきっかけになる。
そうやって先輩、後輩の垣根なく誰もが野球を語れる環境を作ってきたのは間違いなく秋山である。
「みんなで乗り越えることができました」
毎年、「シーズン中に『ちょっと修正をするための練習をしたいな』と思ったときに、練習するための体力が持たなければ意味がない。オフはその体力をつける時間」と、万全の準備を整えてシーズン開幕に臨む。
シーズンが開幕すれば「自分のことで精一杯でチームまで目が届かないのではダメだし、逆にチームのことを考えていたから自分が成績を残せなかったというのも恥ずかしい」と、とことん自分を追い詰める。試合後、バットを持ち、室内練習場へと向かう姿を何度目にしたことか。
こうして入団してから8シーズン、同じように真摯に野球に向き合い、取り組んできた結果、シーズン最多安打記録の達成や首位打者獲得といった功績を経て、リーグ優勝までやっとたどり着いたのである。
「本当にうれしい。苦しかった5月を乗り越えたことで、チームとしての方向性も見えてきた。みんなで乗り越えることができました」
優勝後のインタビューではやはりチームのことを一番に口にした。
このあともクライマックスシリーズ、日本シリーズとまだまだ戦いは続く。
おそらく秋山のことだ。喜びと安堵は一瞬で忘れ、すでに次の戦いに思いを巡らせているに違いない。