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藤沢和雄調教師とダービーの再遭遇。
レイデオロはまだ終わっていない。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2018/09/28 16:30
馬たちを優しい眼差しで見つめる藤沢和雄調教師。
レイデオロを送り出した2017年。
そうこうするうち、開業してから30年目を迎えるに至った'17年、ついに勝利の女神が微笑んだ。
2歳時のデビューから3連勝。休み明けで出てきた皐月賞は5着に敗れたが、そのひと叩きで状態を上げて日本ダービーに挑む事になったその馬こそ、レイデオロだった。
パドックでは周回を追うごとにテンションが上がりそうになったレイデオロ。藤沢はスタッフに指示して、途中から2人曳きで引かせた。
1週前、当該週と調教で乗ってもらったクリストフ・ルメールには特に何も指示を出さなかった。
そうしてスタートを見守ると、「いつも通りゆっくりで後方から」になるレイデオロが見えた。
遅い流れに一瞬、眉をひそめた藤沢の表情を見ていたかのように、ルメールがレイデオロの番手を上げた。
「ペルーサ('10年に2番人気で6着と敗退)のダービーが少し頭を過ってハラハラした」という藤沢だが、「無理して上がって行ったわけではないので、クリストフの判断を信じよう」と腹をくくって見守った。
「長かったね……」と照れるように微笑んだ。
すると、最後の直線を向いてもレイデオロの勢いに陰りは見られなかった。
一時は背を向け続けた日本ダービーだが、開業30年目にしてついに戴冠の時を迎える。
「長かったね……」
そう言って、照れるように微笑んだ伯楽の表情は忘れられない。
その後のレイデオロは神戸新聞杯こそ圧勝したものの、GIコレクションを増やす事は出来ずにいた。
ジャパンCでシュヴァルグランの2着に敗れると、今春、初戦となったGII・京都記念でも、よもやの3着敗退。海を越えて臨んだドバイシーマクラシック(GI)も4着に敗れてしまった。