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今も走り続けるライコネンのF1道。
弱小の古巣に移籍、それがどうした。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2018/09/23 11:00
離脱が発表される直前のイタリアGPでは久々のポールポジションからの2位フィニッシュ。健在ぶりを見せた。
弱小チームでも、それがどうした。
ザウバーはF1に参戦して以来、'06年から'09年のBMW時代を除くと、一度も優勝した経験がない。さらに'17年はコンストラクターズ選手権で最下位に終わったチームだ。チャンピオン経験者が行くべきチームでは本来ない。
だが、ライコネンは「それがどうした」と、世間の評判をまったく意に介さない。
「フェラーリとザウバーはマシンが大きく違うって言うけど、そんなのはどのチームのマシンも多かれ少なかれ違いはある。そして、そのマシンは毎年変わり、来年どのようなパフォーマンスを披露するのかは、チームにいるスタッフだってわからない。僕がザウバーに行ってどうなるのかなんて、外から見ている人間にわかるはずがない」(ライコネン)
確かに、昨年コンストラクターズポイントを5点しか取れずに単独最下位だったザウバーは、今年すでに21点を獲得して最下位を脱出。逆に昨年コンストラクターズ選手権5位で、'80年代から'90年代にかけてチャンピオンの座に何度も輝いた名門ウィリアムズが、ザウバーと入れ替わって単独最下位となるとは、誰も想像していなかったはずだ。
「レースがしたい。ただそれだけ」
たとえ、来年のザウバーに競争力がなかったとしても、ライコネンに後悔はないのだろう。だがなぜ、彼はそこまでしてF1で戦い続けるのか?
「レースがしたいからさ。ただ、それだけ。F1に来て、今年が16シーズン目。僕にとってF1は自分の人生の一部のようなもの。そして、グランプリの週末を僕はいまも楽しんでいる。だから、他人がどう思おうと僕には関係ない。辞めるときは、自分が判断する。レースを無理強いされるのも、レースを無理やりやめさせられるのもごめんだ。それは昔もいまも変わりない」(ライコネン)
ライコネンらしい、実直なレース道である。政治的な駆け引きが多かったトップチームを離れ、デビューした古巣に帰るライコネン。ザウバーとの契約は2年。引退する前に、「アイスマン」が生き生きとレースする姿をもう一度、見たい。