炎の一筆入魂BACK NUMBER
当たり前のように勝つ広島の強さは、
当たり前のように走る新井にあり!
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/09/04 08:00
カープのチーム盗塁数は2016、2017年に続いて今年もリーグトップ。走力が強さを支えていることも間違いない。
外国人選手も例外ではない。
確かに、広島の打者は捕手がわずかに体の前に球を落としても素早くスタートを切っている。捕手によるタッチのミスを狙っているのではなく、「一塁へ投げさせること」で送球失敗の可能性を生むことを狙っているのだ。
だから、ボテボテの内野ゴロでも、一塁への全力疾走は怠らない。それは外国人選手も例外ではない。
他のチームならばシーズン終盤は負傷離脱の危険性を回避するために、力を抜いて走ることもあるが……広島ナインには見られない。
昨季まで広島の外野守備走塁コーチを務めた河田雄祐ヤクルト外野守備走塁コーチは、今季選手会長を務める會澤翼の一塁まで走る姿に「ほかの選手に見られているという自覚を感じた」という。
緒方監督「プロなんだから。当たり前のこと」
緒方孝市監督は開幕から常々同じ言葉を口にしてきた。
「我々の投手陣を中心とした守り勝つ野球をやるだけ」
今季は攻撃陣を中心とした打ち勝つ野球だった。それでも、そう言い続けてきた真意は「凡事徹底」の暗示だったように感じる。
打線は水物。
いくら強力打線でも得点できない試合はある。ただ、守備でのミスは減らせる。
ビジネス書には、「習慣づけ」の大切さも書かれている。
広島一筋32年の緒方監督は、「プロなんだから。当たり前のこと。そこは技術とかではない」と気にも留めない。
「当たり前のことを当たり前にやる」は、広島の強さであるとともに、広島の伝統か。この長年築き上げてきた土壌に、好素材の選手を揃えたことで……セ・リーグ史上2球団目の3連覇を成し遂げようとしている。