マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大学選手権で心が震えた剛腕2人。
則本級の快速球を持つ投手が!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/06/26 17:00
大学野球選手権で好投を見せた苫小牧駒澤大・伊藤大海。2年生の伸び盛りだ。
津村はサイドハンドでも速球に自信。
国際武道大を破り14年ぶりの優勝を果たした東北福祉大。ここにも、もっとすごいヤツがいた。
サイドハンドの快速球右腕・津森宥紀(3年・177cm78kg・右投右打・和歌山東高)が、先発に、抑えのロングリリーフに、フル回転の大熱投だ。
2戦目の白鴎大をタイブレークの10イニングを完投して3安打1失点。その後の準決勝、決勝の慶大、国際武道大をそれぞれ終盤の3イニングから5イニング近くを無失点に抑えて、チームの勝ち上がりにこれ以上ない勢いをつけてみせた。
ADVERTISEMENT
サイドハンドでも、“あの手この手”の緩急じゃない。たまに、思い出したようにスライダーをはさむだけ。138、9キロの速球で入り、追い込んでからの勝負球もやはり138、9キロの速球だ。
白鴎大戦、1対0の9回でも、いっさい“緩”は挟まずに、139キロの速球で空振りの三振だ。
勢いあまって顔の高さに浮いた速球でも、打者が振らされてしまうから、このサイドハンドの球威と心意気がじかに伝わる。
マウンドを支配できているヤツの姿だ。
いったんマウンドで打者と向き合うと、顔がいつも打者を向いている。闘う男の顔だ。丸顔なのに、目が強い。マウンドを支配できているヤツの姿は、それだけで十分な威圧感だ。
優勝をきめた1球、やはり速球で追い込んでおいて、“仕上げ”もやっぱり快速球だった。
「あいつ、爪ないのに優勝しやがった! あいつ、爪ないんですよ。爪ないのに、あんなに真っすぐばっかりで、その真っすぐでとうとう優勝しよった!」
その瞬間、興奮した東北福祉大OBが、笑っているような、泣いているような、あきれているような顔で叫びながらロッカールームに走って行った。