マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大学選手権で心が震えた剛腕2人。
則本級の快速球を持つ投手が!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/06/26 17:00
大学野球選手権で好投を見せた苫小牧駒澤大・伊藤大海。2年生の伸び盛りだ。
則本のような空気を切り裂く快速球。
北海道からやって来た記者の方が言うには、春のリーグ戦は52イニングをわずか7つの四球で乗りきったというのだから、そもそもモノが違う。
テークバックも大きいが、腕の前振りはもっと豪快。140キロ弱のカットボール、125キロ前後のスライダーと100キロ台のスローカーブを“お口直し”に時々はさむが、豪快な腕の叩きはそのままだから、日本文理大打線がまるでついていけない。
それにしても、これだけ全力で投げて逆球がほとんどないのがすばらしい。上体が開かないから、全身のひねりで腕が振られて、腕の軌道にブレがない。
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速球のスピンがすばらしい。久々の「空気を切り裂くような」快速球。三重中京大の則本昂大(現・楽天)がこの大会で、20三振奪っていた頃のボールを思い出す。
「北海道」のチームとの対戦が決まった時、もしかしたら、もらった! しめた! の思いが日本文理大にあったかもしれない。ところが、当たってみたら、なんだこりゃ! びっくりしているうちに、ヒット5本の2点にとどまり、10個の三振を奪われて、試合が終わっていた。
それがほんとのところだったのかもしれない。
翌日も連投してもスピードが落ちない。
翌日の慶應義塾大戦に、まさか連投で伊藤大海が先発してくるとは思わなかった。
前の日、あれだけの“大奮投”があったのに、この日も速球のスピードが“145”より落ちない。
しかも、ピンチになると147、8キロにスピードアップさせて、その速球で勝負を挑む。胸がすく。
そりゃあ、あれだけの熱投の翌日だ。勝負の速球がシュート回転して中に入ることもままあって、5回途中まで投げて7点を奪われ、最後は、慶大6番の内田蓮三塁手(4年・180cm80kg・右投左打・三重高)にスライダーをライトオーバーの二塁打にされて、下を向いたまま大股でマウンドを降りていった姿、これがまた泣かせた。