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大学選手権で心が震えた剛腕2人。
則本級の快速球を持つ投手が!
posted2018/06/26 17:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
辰己涼介(立命館大)ときて、米満凪(奈良学園大)が続いたから、今年の「大学選手権」(正式名称・全日本大学野球選手権大会)は野手ばかりだったのかというと、なかなかとんでもない。
今年のドラフト候補なら、青野善行(4年・180cm73kg・右投右打・市立船橋高)、平川裕太(4年・171cm72kg・右投右打・東海大浦安高)の国際武道大の2人は共に緩急で打者のタイミングを外して、フルスイングをさせない“達者”なピッチングで唸らせてくれた。
東日本国際大の粟津凱士(4年・180cm80kg・右投右打・山本学園高)は、さらに大きな球速差をサイドハンドの腕の振りから駆使して、相手打者のスイングをガタガタに崩したのにも感心したが、「コイツ、すげえな!」と心がブルブルと震えたのは、こちらの2人の“剛腕”だった。
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1回戦、日本文理大(大分)戦に登板した苫小牧駒澤大・伊藤大海(2年・175cm80kg・右投左打・駒大苫小牧高)が、まずすごかった。
「苫小牧駒澤大学」に入学し直した伊藤。
東京の駒澤大学へ進学した「駒大苫小牧・伊藤大海」が北海道に戻っていたことは知らなかった。
高校時代、北海道ではピカ1の本格派右腕だった。北海道どころか、私の中では、関東まで含めて「東日本」でNo.1の快腕。即プロだとばかり思っていた。
1年秋に大学を辞めて、翌春、北海道の「苫小牧駒澤大学」に入学し直し、1年間は対外試合に出られないからその間にしっかり体力を作って、試合終盤までコンスタントに140キロ後半をマークし続けられる本物の「剛腕」に生まれ変わってこの春のリーグ戦のマウンドに上がったから、相手チームはどこも手が出なかった。
投げるたびに2けた奪三振を繰り返し、終わってみれば9勝1敗の圧勝でリーグ戦を制し、4年ぶりに「神宮」にやって来た。
立ち上がりから148~150キロを連発。速いだけじゃ驚かないが、その軌道に“初・神宮”の力みも気負いも見えずに、全力で腕を振っても、いや振ってるなんてもんじゃない、全力で腕を叩きつけるように投げても、捕手が構えたミットにほぼきめてみせるから驚く。