濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
ノア・丸藤正道が三冠王座挑戦!
古巣登場が動かした“歴史”の重み。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2018/05/31 16:30
宮原が持つ三冠王座に肉薄した丸藤。翌週の29日にはホームリングでGHCヘビー級王座に挑戦した(杉浦貴にフロントネックロックで敗北)。
栄枯盛衰、離合集散を乗り越えて丸藤が動く。
一昨年からノアは新会社が運営することになり、新日本との関係は解消。全日本に続くように“復興”の真っ只中にある。そんな時に決まったのが、丸藤の全日本参戦だったのだ。
プロレス界にはつきものだと言える栄枯盛衰、離合集散。秋山と丸藤はその当事者であり、また翻弄されもした。丸藤は秋山がノア最後の試合で勝利した相手である。
その丸藤が、秋山体制の全日本に乗り込んだのだからファンは驚いた。
武藤社長時代の全日本がノアと交流したことはあったが、その時とは状況が違う。
ノアでの最後の対戦で、秋山に「勝ち逃げはさせない」と言った丸藤のチャンピオン・カーニバル参戦である。
「いろんな思いを持って出る。秋山準に勝てなければ意味がない」と言って臨んだ初出場のチャンピオン・カーニバル。丸藤はリーグ最終戦で秋山を下し、優勝決定戦では新生・全日本のエースである宮原にも勝って歴代優勝者リストに名を連ねた。5.24後楽園での三冠戦は、そのリマッチだった。
「立ってるだけでプロレスラー」が理想だという丸藤は、ここ数年で円熟味を増した感がある。ここぞという場面での畳み掛けに加え“タメ”や“緩急”が抜群だ。チョップやトラースキック一発で試合の流れも会場の空気も変えることができる。
“天才”丸藤のセンスと王者・宮原のエネルギー。
宮原との三冠戦では、序盤にヘッドロックで攻め込んだ。「昭和のプロレス」どころか平成も間もなく終わろうというのに、ヘッドロック一つで観客を沸かせ、唸らせる。派手さ、華麗さととどまらないセンス。“天才”というあまりにもシンプルな二つ名の、これが真髄だろう。
対する宮原はあくまでエネルギッシュだ。試合、プロモーション、ファンへのアピールとあらゆる面で“老舗再興”の先頭を走ってきた29歳。その団体への献身ぶりは、新日本プロレスにおけるかつての棚橋弘至を思わせる。
試合のクライマックスはヒザ蹴りの攻防だった。丸藤は虎王、宮原はブラックアウトと、ともに相手の頭部へ突き上げるヒザを武器としている。フィニッシュにも切り返しにも効果的なヒザ蹴りは、現在のプロレス界のトレンドと言ってもいい。
終盤、両者のヒザが正面衝突、一瞬早く立ち上がった宮原が続けざまのブラックアウトからシャットダウン・スープレックスを決めて王座防衛を果たした。攻撃と同等かそれ以上に受身を重視する丸藤をして「受身の取りようがなかった」と言わせたのだから文句なしの勝利だ。