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謙虚で照れ屋な元ブンデス得点王。
マイアーはフランクフルトの神様。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2018/05/19 16:30
長谷部誠のチームメートのアレクサンデル・マイアー。高原直泰とプレーした時期もある。
やけに多いサポーターの「14番」。
ドイツのサポーターも、Jリーグと同じように応援するチームのレプリカユニホームを着ているのが常です。好きな選手の背番号と名前をプリントするのも同じ。そんななか、フランクフルトサポーターの背中を見ながら歩を進めていると、やけに14番の方が多い。いや、ほとんどのファンが14番のような……。
そう、この選手こそが(フランクフルト界隈の)「サッカーの神様」、サポーターが愛して止まないキャプテンにしてクラブのバンディエラ(旗頭)、アレクサンデル・マイアー、35歳なのです。
1983年1月17日生まれ。ドイツ・ブーフホルツ出身でハンブルク育ち。ハンブルガーSVユース出身ですがトップチームには上がれず、ライバルクラブであるザンクトパウリへ加入し、2002年にブンデスリーガデビューを果たします。
その後ザンクトパウリが2部に降格した影響もあって2003-04シーズンにハンブルガーSVに復帰しますが、さしたる成績を収められずに出場機会を失いました。若い頃のマイアーは、一介のプロサッカー選手に過ぎなかったのです。
2004-2005シーズン、当時2部に所属していたフランクフルトがレンタルでマイアーを獲得。彼はシーズン全試合に出場して9得点を奪い、クラブの1部昇格に貢献しました。そこから彼の伝説が始まります。
高原とも仲良しだった真摯な点取り屋。
その後、完全移籍したマイアーは、2006-07シーズンにチームメイトの高原直泰選手と2トップを組み、彼に3アシストした記録も残っています。ちなみにマイアーと高原選手はハンブルガーSV時代もチームメイトで、仲が良かったようです。
2部に降格してもフランクフルトへ忠誠を誓う真摯な姿勢がサポーターの琴線に触れ、その存在は確固たるものになりました。2011-12シーズンに2部得点王を獲得してクラブの1部復帰に貢献し、2014-15シーズンには26試合19得点で遂にブンデスリーガ得点王にも輝きました。
マイアーがフランクフルトで名声を得られたのは、成績面だけが理由ではありません。スターなのに驕らず謙虚な姿勢を貫き、普段の練習では誰よりもトレーニングに励みます。2003年から2016年までフランクフルトの取締役会長を務め、マイアーをハンブルガーSVからフランクフルトへ誘ったと言われるヘリベルト・ブルフハーゲン氏は彼の練習での姿を見て、こう語ったそうです。
「マイアーが練習している姿を見ると、自分が朝の8時から夜の8時まで働くエネルギーが沸々と湧いてくるよ」