プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ジェラードがレンジャーズ監督就任。
経営破綻後の名門、どう立て直す?
posted2018/05/13 11:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
スティーブン・ジェラードとは、凄い男だ。
凄い選手であったことは言うまでもない。
「イスタンブールの奇跡」こと2005年のCL優勝(ミラン相手に3点ビハインドから追いつき、PK戦で欧州制覇を実現)や、「ジェラード・ファイナル(ジェラードのための決勝戦)」と呼ばれる'06年FAカップ優勝(ウェストハム相手にアディショナルタイムに圧巻のスーパーミドルを撃ち込み、PK戦での勝利を演出)をはじめ、自らのパフォーマンスでリバプールを勝利に導いた武勇伝はいくつもある。
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だが、その古巣でU-18チームの監督を1シーズン務めただけで、いきなりスコットランド伝統の強豪グラスゴー・レンジャーズの監督就任要請に応えるとは。
しかも、「考える必要すらなかった」というのだから、その度胸と自信には恐れ入る。ジェラードが4年契約に合意したトップチーム初挑戦の舞台は、常人の感覚では考える必要のあることだらけなのだから。
大きく開いたセルティックとの差。
「プレミアシップ」と呼ばれるスコットランドのトップリーグ(全12チーム)は、歴史的にグラスゴー市内の地元ライバルでもある、セルティックとレンジャーズの二頭立てレースの色合いが強い。
極端な言い方をすれば、両軍サポーターにとっては、「オールド・ファーム」の呼称で知られる地元対決こそがリーグの優勝争い。ライバルよりも上、つまりリーグ首位の座に就くことができなければ、何位だろうが敗者でしかないような感覚に違いない。
しかも、レンジャーズが名実ともにセルティックのライバルだったのは、6年前にクラブが経営破綻に見舞われる前の話。去る4月29日のオールド・ファームで決まったセルティックの今季優勝は、リーグ7連覇を意味した。
当日のレンジャーズは5失点の大敗。その2週間前に行なわれたスコットランドFAカップ準決勝でも4失点を喫して敗れており、計180分間の地元対決は合計0-9で惨敗したことになる。