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全日本柔道で執念の復活優勝。
最重量級・原沢久喜が流した涙。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2018/05/05 08:00
勝利の瞬間、目に熱いものがこみあげた原沢。
今後はスポンサーを募って柔道を。
それは畳の外での行動にも表れていた。4月末をもって、所属のJRAを退社することを決めていたのだ。今後はフリーとなり、スポンサーを募りつつ、競技を続けていくことになる。
身分は不安定になる。それでも、柔道を最優先にしたいという気持ちが強かった。
「日頃から練習、私生活、すべてにおいて柔道にかけていきたいと思います」
そんな決意が、9分を超える決勝を戦い抜いた、最後の支えとなった。
原沢が執念、粘りを畳の上に体現することができたのは、好勝負を演じた王子谷の存在あればこそでもある。そして王子谷もまた、原沢と同じ目標を見据える。
「(東京五輪まで)あと2年。最後は笑って終わりたいです」
原沢と王子谷だけではない。ここ5大会で3度優勝を果たしたことから、100kg超級2人目の世界選手権代表に選ばれた小川雄勢ら、若い世代も台頭している。
誰もが最大の目標とする東京五輪代表の座を得るのは誰か。
紙一重と言えるほど力の拮抗する彼らの戦いを分けるのは、今後2年間の気力のありようにかかってくるのかもしれない。