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メジャーとステーキと赤ワイン。
衣笠祥雄さんの深い野球愛に触れて。 

text by

笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph byKyodo News

posted2018/04/27 10:30

メジャーとステーキと赤ワイン。衣笠祥雄さんの深い野球愛に触れて。<Number Web> photograph by Kyodo News

1987年6月、2131試合となる連続試合出場世界新達成で、ファンに手を振る衣笠祥雄。

「夢を追いかけるって、いいですよね」

 日本帰国時には食事にも誘っていただいた。

 メジャーの野球に魅せられ、そこで奮闘する日本人選手の取材がしたいと身勝手に会社を飛び出した愚生にも「夢を追いかけるって、いいですよね」と、身に余る言葉をかけていただいた。

 2215試合連続出場の世界記録('87年当時)を樹立し、国民栄誉賞まで受賞した偉大な人生の大先輩。衣笠さんの優しさに触れることの出来ない淋しさを今、感じている。

国民栄誉賞を受賞するとはそういうことか……。

 最後に……少し下世話な話と感じる方もいるかもしれないが、忘れられない思い出を記す。

 '07年、松坂大輔がレッドソックスに入団し、4月のニューヨーク遠征時に衣笠さんが取材に来られた。試合後だったか、休日の日だったか、またしても覚えていない。大好きなステーキと赤ワインで夕食をともにした帰り道、タクシー内での会話だった。

「笹田くん、僕はね、“立ちション”も出来ないんですよ」

 笑い飛ばしながら話す姿は、冗談が半分と最初は思った。だが、国民栄誉賞を受賞するとはそういうことなのか、とも思った。だから、言ってみた。

「衣笠さん、ここはニューヨークです。大丈夫です」

 かつてないほどに、衣笠さんは大笑いをしてくださった、その笑顔が今も瞼の裏に焼きついている。

「野球をやるのは選手なんですから」

 口癖でもあったこの言葉はもう聞けない。

 1人の野球記者に、野球の奥深さと選手への愛情を忘れてはならないと教えてくれた偉大な恩人。

 感謝の気持ちを伝えるべく、愚文ではあるが捧げたい。

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