猛牛のささやきBACK NUMBER
好調のオリ伏見寅威は何を変えた?
「ナカジさんの影響がでかいです」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/04/20 07:30
プロ6年目の今季は打撃だけではなく、ムードメーカーとしても欠かせない存在となっている。
ラガーマンの父が名づけた「寅威」。
伏見が野球を始めたのは小学3年生の時。「寅威(トライ)」という名前からわかるように、名付けてくれた父はラガーマンだった。
「子供の頃の写真を見返すと、ラガーシャツを着せられていたり、横にラグビーボールが転がっていたり。ラグビーをやらせたかったんでしょうね」と伏見は苦笑する。
しかし、寅威少年がのめり込んだのは野球だった。野球を始めた頃、父に「野球はほんの一握りの人しか上にいけない。ラグビーなら頑張れば上にいけるぞ」と言われた。それが悔しくて、「オレは何がなんでも野球で上にいってやる」と誓った。
伏見はその誓いを果たし、2012年のドラフト3位でオリックスに入団した。
だが、上の世界は甘くない。1年目から一軍には帯同するが、伊藤光や山崎勝己、2016年以降は若月健矢がマスクを被ることが多く、伏見は第3捕手という立場を覆せずにいた。打力を買われて一塁などで出場することもあったが、レギュラー獲得には至らず、昨年はノーヒットに終わった。
指導陣と積極的にコミュニケーション。
しかし今年はここまで15打数6安打、打率.400と好調だ。その要因について聞くと、こう答えた。
「あれこれ手を出さず、これ、と決めたことをずっと継続してやっているからじゃないでしょうか。以前は少し調子が悪くなってくると、足を上げてみようとか、バットをこういうふうに出してみようとか、いろいろ変えようとして、どんどん違う自分になっていってしまった。そうすると、戻ってみようと思った時に、戻れないんです」
“これ”というものを確立する上で、今シーズンは福良淳一監督やコーチ陣と積極的にコミュニケーションを取るようにしたことも大きいと言う。以前は自分から監督やコーチと技術の話をすることはなかった。「何か言われたら、それをやらなきゃいけないから」という理由だった。
「今季は、今までやっていなかったことをやってみようと思って。今までは周囲に言われることと、自分のやりたいことが違ったので、言われる通りに取り組めなかった。でも今年は自分から『こういうふうにしたいんですけど、どう思いますか?』という話をしてみたんです。そうやってコミュニケーションを取ることで、自分がやりたいことと、周囲からのアドバイスがリンクするようになった。それが一番よかったですね」