猛牛のささやきBACK NUMBER
好調のオリ伏見寅威は何を変えた?
「ナカジさんの影響がでかいです」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/04/20 07:30
プロ6年目の今季は打撃だけではなく、ムードメーカーとしても欠かせない存在となっている。
バットの出し方を下から振り上げるように。
その1つが、バットの出し方だった。
「僕はバットを上からじゃなく、下から振り上げるように使いたかった。それを監督に相談しました。『いやダメだ。バットは上からだ』と言われるかなと思ったら、監督は『全然いいよ』とオーケーを出してくれたんです。ただし軸足に体が残りすぎたらダメだぞというふうに条件つきで。
今までは、ダメと言われるのが怖くて相談できなかったんですが、言ってみたら受け入れてくれたので、言ってよかったです」
そのおかげで今は迷いなく突き進むことができている。
4月15日の先制点につながったライト前ヒットも、外角の低い変化球に下からバットを出し、すくい上げるようにセカンドの頭上を越えさせた技ありの一打だった。
「バットを上から出していたら、あれはゴロになったりする。あんなにうまく行くことはなかなかないけど、やってきたことの成果が少しずつ出ている」と手応えをにじませた。
「ナカジさんの影響がでかいです」
それでもまだ出場機会は少ない。今季、先発出場は2試合だけ。それ以外は代打で勝負強さを発揮している。
「打席が少ないのはわかっているから、レギュラーの人とは打席への向かい方が全然違う。ガツガツ行っています」
それでいて力が入りすぎることなく、打席で周りが見えている。
「今年は打席に入ってから時間を取るようにしています。周りを見ながら、『球場は盛り上がっているけど、このへんは意外と静かだな』と感じたり、ピッチャーの顔をじっと見たり。(11日の)楽天戦の時は、松井裕樹の顔を見ていたら、あいつも見返してきて、『抑えてやる』みたいな気持ちをすごく感じ取れました」
打席で余裕を持てているのは、今年代打での出場が多くなっている中島宏之の影響だと言う。
「『絶対打ってやる!』と思いすぎず、『やったるでぇー』くらいでいい。それはナカジさんの影響がでかいです。ナカジさんは、『キャーン行ったるわぁ』って、半分遊びぐらいな感じで出ていくので、『あれぐらいの気持ちでいいんだ』と。ナカジさんはやることをやっているから、これ以上自分を追いつめてもな、という感じなんでしょうね」