サムライブルーの原材料BACK NUMBER
中村憲剛のスタイルはまだ増える。
モチベは「ほんと尽きないです」
posted2018/04/11 07:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE
そんな引き出しも持ってたの?
中村憲剛と新しい発見はセットだ。
開幕のアウェー、ジュビロ磐田戦から驚かせてくれた。スルスルと相手の間を抜けていき、クロスに飛び込んでの鮮やかなヘディングシュートとは。お笑い芸人バイク川崎バイクのニューパフォーマンスも勢いそのままに飛び出している。
ピンポイントで合わせたヘディング弾の後、今度はセットプレーのキッカーで味方のピンポイントに合わせるほう。1得点2アシストと“つかみはOK”で37歳のシーズンは始まったのである。
一昨年はリーグMVPを受賞、昨年は悲願のチーム初タイトル(本当に長かった!)を獲得した。人は目標を達成した後のモチベーションに苦しむという話もよく聞くのだが、この人にはなぜだかどうしてかそれがまったくない。
桜満開の3月下旬、リーグ戦こそ好調ながらACLは勝てない不調が続いて“フロンターレ桜”は七分咲きだった。
チームが練習する麻生グラウンドは陽気に包まれていた。
名古屋グランパス戦でも決勝アシストをマークした背番号14は、ミニゲームで「受け手」と「出し手」を繰り返していく。裏への飛び出しを狙おうとする。
高いモチベーションは見ているほうにも伝わってくる。その源流に流れているものの正体は、一体何なのか。眺めているだけでは分からない。
「これ以上何をすればいいのかなって」
直接、中村に尋ねることにした。すると「その答えは至って簡単ですよ」と返ってきた。
一拍ほど置いて、彼は言葉をつないだ。
「サッカーがうまくなりたいって、それだけですから。MVPをもらおうが優勝しようが、うまくなることに対する欲は変わらない。確かに優勝して次にどんな感じになるのか未知数な部分はありましたよ。でも練習場に来てボールを蹴ると、もう。パスを通す、通せない、丁寧にできている、できていないとか、そこがうれしいし、悔しいし。
自分の思ったとおりにできるかどうかの積み重ねが日々の練習にあって、そこに試合が入ってきて勝ち負けがある。しかも相手も違うし、試合でもまったく同じシチュエーションってないじゃないですか。ここにもうれしさ、悔しさがあって、また練習やって、また試合がある。結局は尽きないんです。
MVPをもらっても優勝できない悔しさが残って、鬼木(達)さんが監督になってから守備の意識を強めるようになった。そこで守備のスイッチ役にチャレンジできたシーズンで優勝できた。正直、これ以上何すればいいのかなって思ったんです。そうしたら勝手に探していくもんですね。自分のなかで、やれることを」