サムライブルーの原材料BACK NUMBER
中村憲剛のスタイルはまだ増える。
モチベは「ほんと尽きないです」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/04/11 07:00
能力はもちろんだが、中村憲剛ほど楽しそうにサッカーをする選手も、そうザラにはいないのだ。
モチベーションは湧き出るもの。
モチベーションの行方を気にしていたフシはある。しかし元々、目標を立てるタイプではないという。「目標を立てないから、逆に言えばどこまでもいける」が中村憲剛の流儀。MVPでも長年かかった初タイトルでも、達成感に浸る時間はないし、そこにとどまっていることもない。
うまくなりたい欲求と、情熱がつむぐ喜怒哀楽、そして勝手に進んでいく探究心。
先にあるものを追い掛けるよりも、目の前にある自分の感覚と会話をしていく。それが彼の日常である。
モチベーションはつくるものじゃない、と中村は言う。
モチベーションは湧き出るものだ、と。
湧き出てくる限り、尽きることはない。
「やっぱり高いレベルで万能選手になりたいという気持ちがある。今までは間で受けて前を向いてスルーパスが基本的なプレースタイルでしたけど、今じゃ“裏抜け”も楽しくなっているし、シュートもね。去年の守備のスイッチもそうですし、自分で自分の幅を広げていく作業が毎年、何か出てくるんで。いや、ホント尽きないです」
中村が開幕からポジションを確保するフロンターレの2列目は、Jリーグで最も層が厚いと言っていい。昨年は家長昭博、阿部浩之らが加入し今年は大久保嘉人の復帰に、ドリブラー齋藤学の獲得。ここに活きのいい若手が加わっているのだから、気を抜けばいつポジションを失うか分からない。「湧き出るモチベーション」はこの熾烈な競争社会が大いに関係している。
「家長、阿部ってもろかぶりですから(笑)」
中村の言葉に、熱がこもる。
「いい選手が、バンバン入ってきますからね。家長、阿部って、俺と(ポジション)もろかぶりですから(笑)。でも逆に、それが自分の幅や可能性を広げてくれています。いがみあう競争なんかじゃなくて、みんなで戦っていくための競争。
今は試合に出られているといっても、いつどうなるかなんてわからないじゃないですか。自分が出るためにどうしていくか、このチームにどうやって有益なことをしていけるか。俺、自分が安泰だって思ったこと一度もないですよ。
勝利に貢献していく、チームにとって有益な存在になる、その作業をずっとやっていかないといけない。だから尽きないし、限界もないし、天井もない。僕はそう思ってやっています」