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ペトロヴィッチの幻影に惑う浦和。
立ち返り共感し合える原点はあるか。 

text by

塚越始

塚越始Hajime Tsukakoshi

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photograph byJ.LEAGUE

posted2018/04/05 16:30

ペトロヴィッチの幻影に惑う浦和。立ち返り共感し合える原点はあるか。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

昨季のアジア王者が5戦未勝利で苦しむ。浦和を取り巻く現状はJリーグ特有の難しさを感じさせる。

ミシャスタイルを捨てるか、取り戻すか。

 ミシャの幻影に惑う選手たち。2トップも採用したが、状況は変わらなかった。クラブ最長の5年半を率いた特殊なミシャスタイルが、主力選手の体に染みついているのは必然だ。しかし、そのスタイルを打ち消すような作業を進めてきてしまったのも事実である。

 戻るべき原点はどこか。ミシャの攻撃的スタイルに立ち返るべきなのか、そこに戻ってはいけないのか。完全に捨て去るのか。堀監督を解任したとはいえ、そのあたりがいまだに整理されずにいる。

 2年連続の監督解任ともなれば、フロントの責任論が噴出するのは必然である。ただ、少しクラブの本質的な問題にも目を向けておきたい。

 浦和は一時期、ゼネラルマネジャー(GM)を置くチーム作りに着手した。しかし、2011年に残留争いに巻き込まれ、その体制が崩壊。そしてクラブを熟知し、一時クラブ職員となっていた山道守彦強化本部長が現場復帰し、改めて補強中心のチーム作りを進めて現在に至る。

親会社から出向の社長が監督の任命権を持つ。

 ただ今季はリーグ優勝を目標にしながら、堀前監督への「リスペクト」(山道強化本部長)で解任の判断が遅れるなど、ミシャ解任時に続いて結果より感情論が優先されるあたりに、プロフェッショナルに徹し切れていなかったことが伺える。加えて、2~4年周期でクラブを去る、親会社から出向する社長が監督の任命権を持つなど、日本式の体制での限界も感じる。

 例えばブンデスリーガのドルトムントは、ラインハルト・ラウバル会長のもと、2人のCEO(最高経営責任者)がサッカー競技面と財政面に分かれて統括している。さらにサッカーのCEOのもとに「補強専門家」のスポーツダイレクター(SD)がいる。

 今季は成績低迷に伴いペテル・ボシュ監督解任と同時に、1週間前にケルンを解雇されていたペーター・シュテーガーを電撃就任させた。監督の人選には賛否両論あるが、重大事項の決定権がCEOとSDに与えられていたからこそ下された素早い決断だった。

 浦和は以前の失敗を糧に、クラブのビジョンのもとにチームを構築するCEOやGM、SDを配置する体系化をしてみるのも手ではないだろうか。

【次ページ】 「陽介が1人で背負い込みすぎている」

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