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ペトロヴィッチの幻影に惑う浦和。
立ち返り共感し合える原点はあるか。
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/04/05 16:30
昨季のアジア王者が5戦未勝利で苦しむ。浦和を取り巻く現状はJリーグ特有の難しさを感じさせる。
各クラブの「浦和対策」を上回れず。
昨季はペトロヴィッチ元監督の解任劇のあと、失点の多さを改善するため堀前監督が守備に軸足を置いてチームを再建し、10年ぶり2度目のACL制覇を果たした。
ただし、そのビッグタイトル獲得の裏側で、リーグ戦は7位に終わっている。11月からのリーグ3試合で1ゴールも奪えないまま3連敗でシーズンを終えていた。
相手が好戦的なアジアの舞台では、守備を固めてラファエル・シルバの個人技を生かすカウンターが効いた。だがJリーグでは、各クラブが練ってくる「浦和対策」を上回る、あるいは攻略するプランを見出せなかった。
堀氏は守備を構築し、ペトロヴィッチ氏のもとで積み上げてきたコンビネーションサッカーを加味させるスタイルを目指した。しかし思惑通りには行かず、むしろ守りを意識すればするほど、ミシャスタイルの特長を打ち消してしまった。
2018シーズン、ラファエル・シルバが1月中旬に中国2部の武漢卓爾職業足球倶楽部へ電撃移籍したのは誤算だったにせよ、攻撃が機能しない点はうやむやのまま時間は過ぎ、むしろ形はどんどんファジーになっていく。
堀氏が2011年に続いて採用した4-1-4-1(4-1-2-3)の布陣は、個の打開力が求められる。ミシャの連動性を重視した「1トップ2シャドー」とは似て非なるものだった。
攻撃にダイナミックさが生まれない。
今季、選手からはミシャ時代との相違点についての話がよく聞かれた。興梠の言葉からは、堀前監督のもとでミシャスタイルをいかに生かすのか、苦悩していたことが窺える。
「(2節で広島に1-2と逆転負けを喫したあと)ミシャサッカーとは違うことをやっているので、またいろいろ頭を使い考えながらやらないといけない。上手くパスをつないで、相手に何もさせないような試合をしたかったけれど、攻撃も守備も中途半端で、やっている自分たちもミスでボールを奪われ、非常にストレスの溜まる試合になってしまった。みんなで意思統一していかないといけない」
興梠は攻撃のダイナミックさが生まれないことに首を捻っていた。
「1トップ2シャドーでワイドが開いているという、そんなにミシャのときと攻撃に関しての形は変わらず、1人ひとりが意識すればできるとは思うけれど……。もちろんミシャのサッカーはすごく魅力的な攻撃サッカーだったので、それが1人ひとりの頭の中に残っていると思う。
堀さんの守備を固めることをやりながら、攻撃に関しては、もう少しダイレクトにコンビネーションで崩す形をもっと選手たちだけでもやってもいいかなと。最近は2点、3点と決める試合があまりなく、そういう意味で攻撃面のコンビネーションが必要だと思う」