ライオンズの伝統を受け継ぐ者たちBACK NUMBER
なぜ、源田壮亮は誰からも信頼されるのか。
新人王に学ぶ組織でポジションをつかむ術。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/04/03 11:30
辻監督との約束を果たし、ようやく達成感が。
彼の口調は最後の最後まで消え入りそうだったが、聞き進むにつれて、そのか細い声の裏に逞しさやしたたかさを感じるようになっていた。きっと、辻監督がオーダー表にその名前を書き続けた理由はこういうものではないだろうか、とちょっぴりわかった気がした。
プロ1年目。キャンプが終わった直後、気疲れから胃腸炎になった。世の新入社員と同じように“五月病”にもなった。夏場には自分のものとは思えないほどに体が重く感じた。消耗に抗うため、深夜に寮の食堂で卵かけご飯を無理矢理かきこむ日々だった。
そして、メットライフドームでのシーズン最終戦、ゲームセットの瞬間、つまり辻監督との“約束”でもある全試合フルイニング出場を果たした瞬間に、ようやく充実感らしきものが身体を突き抜けた。
「達成感はすごかったですね。最初は、すべて出るということがどれくらいのものかがわかっていなかったんですけど、報道などで『達成したら何年ぶり』とか書かれているのを見て、ああそういうことなんだなって……」
順風だったわけではない。溢れる自信があったわけでもない。むしろ、その逆である。だが、周りを見渡して、組織のために自分ができることを見つけるセンスはズバ抜けていた。
不安だから、考えるんです――。
春、新しい環境に飛び込んでいく人たちに、源田の言葉を贈りたい気持ちになった。
※「辻」は、1点しんにょうです。
▶ 源田壮亮「チームに欠かせない存在となるための思考力」(メットライフ生命 #老後を変えるキャンペーンサイト)
源田 壮亮Sosuke Genda
1993年2月16日、大分県生まれ。中学生の時に野球を始め、大分商業高校、愛知学院大学、トヨタ自動車を経て2016年のドラフト3位で埼玉西武ライオンズに入団。1年目の昨季、開幕スタメンを勝ち取ると、新人遊撃手としては史上初となる全143試合フルイニング出場を果たしてパ・リーグ新人王に輝く。オフには第1回アジア プロ野球チャンピオンシップの日本代表に選出された。179cm、73kg。