Jをめぐる冒険BACK NUMBER
タフな南米遠征初戦で敗戦の森保J。
A代表経験、初瀬亮が言う「ヌルさ」。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2018/03/23 17:00
フィジカルに優れるチリ相手に臆することなく戦った初瀬。厳しい日程の遠征で得るものは多そうだ。
「良い経験では済まされない年代」
森保監督も似たような雰囲気を感じ取っているのかもしれない。試合後、「若い選手たちですけど、次のプレーに繋げる責任感や集中力を、一人ひとりもっと上げていかなければいけない」と語った指揮官は、選手たちに対しても「もう、良い経験では済まされない年代だぞ」と伝えている。
チームに向けられた初瀬の厳しい眼差しは、日本代表を経験した者ゆえの使命感でもある。昨年12月、東京五輪世代から最初にA代表に選出されたのが、この両足を自在に操るクロッサーだった。
舞台は東京で行われたE-1サッカー選手権。初瀬自身は出場機会を得られなかったが、国内組のサバイバルの場として位置づけられたこの大会で、国を背負い、生き残りを懸けて戦う先輩たちの凄みを目の当たりにしたという。
「一つひとつのパス&コントロールのこだわりも凄かったし、練習の雰囲気から引き締まっていて、一体感がありました。今回、僕らもせっかく南米までやって来たのに、もう1試合終わってしまって、もったいない。同じポジションのライバルを食ってやろうという気持ちが全員にあれば、それが一体感になって強くなると思う。自分も厳しい要求をすることで、自分のパフォーマンスも評価も上がると思うから、やっていきたいと思います」
ガンバでは今季ベンチを温め、J3に出場。
もっとも、初瀬が抱く焦りや危機感は、代表チームに対してだけでなく、自分自身に対して、でもあるようだ。プロ2年目の昨シーズン、ガンバ大阪で19試合に出場したが、レヴィー・クルピ監督を迎えた今シーズン、ベンチを温める試合が続いているのだ。
シーズン前のキャンプでは4-3-2-1の3ボランチの一角に抜擢されたが、2ボランチへの変更にともない、サイドバックの控えに降格。3月11日にはガンバ大阪U-23の一員としてJ3開幕戦のピッチにも立った。J3には昨シーズン、1試合も出場していないにもかかわらず。
途中出場を飾った3月14日のルヴァンカップ・浦和レッズ戦のあと、初瀬は苦しい胸の内を明かした。
「調子が良いのにチャンスを与えてもらえなくて、本当に悔しいです。ただ、A代表に行って、練習からの積み重ねが大事だと改めて感じましたし、自分が今、ポジション争いをしているのは、代表クラスの選手たちなので、毎日良い刺激をもらえている。ワンプレー、ワンプレーを大事にして、アピールしていくしかないですね」