野球クロスロードBACK NUMBER
楽天・島内宏明を本気にさせたもの。
減った年俸と稼頭央・銀次の言葉。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2018/03/25 07:00
ドラフト6位で2012年に楽天入団。昨季は全143試合に出場し、打率.265、本塁打14、打点47の成績を残した。
「あんまり、本気じゃなかったんで」
自分の体と対話すればするだけ、野球のパフォーマンスが高まっていく――島内は今、それを痛感している。むしろ、これまでなんでそんなことに気づけなかったんだ、と自嘲しているくらいだ。
島内という男は、強く自己主張するようなタイプではない。いつも穏やかな笑みを浮かべ、結果を残したことを称賛しても「まだまだです」「全然ダメです」と、控えめなコメントを並べる。
報道陣が好調の秘訣を探ろうと質問しても「変わったことはしていませんよ」と、あっけらかんとした表情で煙に巻く。
そんな島内がある時、ボソッと本音を漏らしたことがあった。
「あんまり、本気じゃなかったんで」
誤解を招かないように補足すると、島内の言葉は「練習してこなかった」とイコールにはならない。練習はしていた。それは、現状のパフォーマンスを高めるために淡々と体を動かしていた、と表現したほうが正しい。
年俸を下げられて抱いた危機感。
楽天に入団した2012年から、島内は長打力を期待される選手だった。2年目の'13年には97試合で6本塁打を放ち、チームの優勝に助力もできた。持ち味は出せてはいた。ただ、裏を返せば、それだけでしかなかった。
「遠くへ飛ばす力はあったのかもしれないですけど、それが持続できなかったんですね。野球選手って、技術的なことは嫌でも練習するじゃないですか。でもあの頃は、それを1年間出し続ける体がなかったんです」
それを気づかせてくれたのが結果であり、球団の評価だった。
'15年、島内は25試合の出場にとどまり、入団してから初めて本塁打もゼロに終わった。
厳しい現実が突きつけられる。オフの契約更改交渉。2800万円(金額は全て推定)だった年俸が、2100万円まで下げられた。
マズいと思った、と島内が振り返る。
「その頃までは本気で野球をやってこなかったんだなって。実際、本気じゃなかったんですよ。でも、年俸を結構下げられて、『このままじゃマズい』と思った。そこからですね、ウエートを真剣にやるようになったのは」