サッカー日本代表 激闘日誌BACK NUMBER
ジャーナリスト二宮寿朗が目撃した激闘の記憶
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKYODO
posted2018/03/30 10:00
神懸かったスーパーセーブでチームを勝利に導いた川口(中央)を中心に喜ぶ日本代表。
俊輔が学んだ、“代表チームのために”。
チームの一体感も、日本の「経験の力」。
中村俊輔はチームワークを語るとき、今でもこのアジアカップの話をよく持ち出す。レギュラーから外された2010年の南アフリカワールドカップで、チームの一員として何ができるかを考えたとき、中国での先輩たちの振る舞いが頭にあったという。
彼は後にこう語っている。
「控えにいたマツさん(松田直樹)、アツさん(三浦淳寛)たちキャリアを積んできた人が(試合に出る選手に)タオルや水を持ってきてくれたり、ベンチから盛り上げてくれた。紅白戦でも自分のことを見ているわけだし、そこで集中力を欠いた態度を見せるわけにもいかない。だから明るく過ごしていかなきゃいけないと思うようにもなった。代表チームのことだけを考えようと」
代表チームのために――。
あの南アフリカでのワールドカップ。先輩たちの姿を見てきた中村や川口たちが今度は控えにまわり、そのメンバーがチームを助け、盛り上げた。それがベスト16の躍進にもつながった。そして、翌年のアジアカップでもまとまりを見せて日本は優勝を遂げている。
ワールドカップ出場は今回のロシアで6大会連続となる。経験値をまた一つ積み上げて、大舞台に挑むことになる。
経験、そしてチームワーク。脈々とサムライブルーに受け継がれるDNA。
ブーイングと汗の記憶は、彼らが一体となって日本代表のプライドを顕示した誇りの記憶である。