サッカー日本代表 激闘日誌BACK NUMBER
フォトグラファー杉山拓也が撮った激闘の瞬間
posted2018/03/23 10:00
text by
杉山拓也Takuya Sugiyama
photograph by
Takuya Sugiyama
ワールドカップ南アフリカ大会ベスト16(プレトリア ロフタス・ヴァースフェルド・スタジアム)
日本 0-0 パラグアイ(PK戦3-5)
ユーロやチャンピオンズリーグは何度も取材経験があったが、ワールドカップは2010年の南アフリカ大会が初めて。現地の治安の悪さが叫ばれていたが、実際に入ってみると、他の外国と同じように、危険な地区に行かなければそれほどでもなかった。
日本代表はグループEを2勝1敗で2位通過。史上初のベスト8進出をかけて、6月29日、首都プレトリアでパラグアイと戦った。
ともに得点に恵まれず、延長戦も0-0で終わり、PK戦に。普段はゴール裏からキッカーを狙うが、雑誌協会の共同取材ということもあり、1人だけ遠く離れて反対サイドのタッチライン沿いにカメラを構えた。ここからだと、センターラインに並んで肩を組む日本代表を背中越しに撮影することができるからだ。
1番手の遠藤保仁、2番手の長谷部誠は順調に決まったが、3番手の駒野友一がクロスバーに当てて痛恨のミス。続く本田圭佑は成功するものの、先攻のパラグアイが5人全員決め、日本の敗退が決まった。
PK失敗の駒野、慰める松井と阿部も涙。
その瞬間、僕は、結局1試合途中出場しただけで南アフリカを去らなければならなくなったベンチの中村俊輔をカメラで追ったが、1人、ゴールに背を向け、こちらに歩いてくる駒野が視界に入った。
その駒野のもとに途中交代した松井大輔と阿部勇樹が近寄ってくる。
「自分さえ失敗しなければ」と目を赤くはらす駒野を優しくいたわる2人。
2人の目もまた……。
このときの日本代表は、スタメンもビブス組もなく、本当にひとつにまとまっていたのだなと感じた瞬間だった。