ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
球団広報という白も黒もない仕事。
清宮の機知が背中を押してくれた。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2018/03/09 11:00
清宮幸太郎のようなスター選手が入団すると球団広報の仕事は激増し、嬉しい悲鳴をあげることになる。
清宮幸太郎「それで、勝ちですよ」
そんな小職の経歴を、大半のファイターズの選手は知らないだろう。面影のない見た目を利用して、自ら明かすこともない。
プロを志すには程遠いレベルであったことを、今になって再認識しているからである。ただ、時には「バレる」ことがある。アリゾナでのキャンプ中。歴代最多とされる高校通算111本塁打の清宮選手と一緒にいる時だった。あるスタッフが、甲子園でホームランをマグレも、マグレで刻んでしまった過去を耳打ちしてしまったのだ。
清宮選手は「えっ……」と、しばし絶句する。こちらは「実は……」と認めた。
そして私は、続ける。
「高校3年間で111本もホームランを打った選手を、1本しか打てなかった『おじさん広報』がカバーする。人生って、不条理でしょ……」と。
自虐ではないが、気恥ずかしく、少々の悲哀はある。3年夏までベンチ入りしたこともない応援部員だったので、今でも時に一人歩きする「肩書き」に気が引ける。本音である。
ただ18歳の天真爛漫なスラッガーはおおらかで、機知に富んでいる。
「その1本が、甲子園ってすごい。それで、勝ちですよ」
そんなルーキーは高校1年夏に、甲子園で2本塁打している。
心温まる「グレー」な賛辞にも励まされ、白黒が判然としない球団広報という使命と向き合うのである。