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平野佳寿は貫禄、牧田和久は魔術。
MLBで「ルーキーズ」の評価は上々。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2018/02/27 07:00
2010年~2017年の8年間で、平野佳寿の平均登板数は60近い。その安定したパフォーマンスとキャリアはMLBでも期待大だ。
「平野には打者を空振りさせる能力がある」
マイク・ヘイゼンGMや球団OBで殿堂入り左腕のランディ・ジョンソンが注視する中、平野はマウンドに上がって軽く深呼吸し、肩の力を抜き、背筋を伸ばしてまっすぐ立ち、左足を上げたかと思えば、勢いよく踏み込んで胸を大きく割り、力のある速球を投げ込んだ。
「まずはどれだけ強い球を投げられるか」と本人が言う通り、彼は投手の基本である「真っ直ぐ」にこだわり、スライダーやフォークボールは二の次に投げ込んだ。
「毎年、この時期はまず真っ直ぐをしっかり投げられるかどうかなんで、変化球はあまり気にしてない」
全球を受けたアレックス・アビラ捕手はこう言った。
「試合の終盤に投げる投手に必要なのは、打者を空振りさせる能力だ。速球とフォークボールのコンビネーションがある彼(平野)には間違いなく、その能力があると感じた」
牧田の投球を、周囲は魔術のように見つめる。
牧田がユニフォームを着て投球練習を行ったのは、平野が投げた翌々日のこと。彼が投球練習場=ブルペンに入ると、投手コーチだけではなく、マイナーの統括コーチや巡回コーチ、球団が育成をしている2人のアンダースロー投手らが集まってくる。
そこで牧田が体をぐっと沈ませて、低い位置から打者の高めに伸び上がってくる独特の軌道の速球を投げると、彼らはまるで魔術を見たかのように驚く。緩急差の大きいカーブを投げると「なんでそんなにブレーキが掛けられるんだ?」と思わず笑ってしまう者もいるぐらいだった。
だが牧田もまた、チェンジアップやスライダー、シュートなどを投げ込みながらも、徹底的に速球にこだわっているようだった。彼はこう言った。
「高めへは強い球を投げられたが、まだ低めに刺せてない。まずは真っ直ぐをしっかり投げないと変化球も生きてこないし、どれだけ強く投げられるのかだけです」
全球を受けたオースティン・ヘッジス捕手は、こう言った。
「サブマリンからの速球、カーブ、スライダー……今まで見たことがない球筋ばかりだった。あれを打つのは難しい」