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重力に逆らって登れ! 壁面の頭脳戦。
「スポーツクライミング」の楽しみ方。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJMSCA/アフロ
posted2018/03/01 11:00
2018年のボルダリングジャパンカップ女子で優勝した野口啓代。
第一人者・野口啓代が11度目戴冠。
この大会はボルダリング日本一を決めるコンペティション(大会当日ルール適用)であり、春から始まるボルダリングワールドカップシリーズ日本代表を選考する大会でもあり選手たちにとって決して負けられない大会だ。
女子決勝で存在感を示したのが、日本クライミング界の第一人者である野口啓代だ。昨年の覇者である15歳の伊藤ふたばと国際ユース大会で結果を出している14歳の森秋彩の追随を許さず2年ぶり11度目の戴冠。経験に裏付けされたここぞというところの読みは抜群で、危機感を持ちながらも若い2人を上回った。
男子では前人未到の3連覇を期待された藤井快が見事に優勝を飾った。難攻不落ともいえる厳しいボルダーをただ一人クリアし、王者の矜持を見せつけた。
また昨年のワールドカップ複合種目で総合優勝している楢﨑智亜が3位に入り、安定した力を発揮している。
壁を目の前にした選手たちは初見のコースを自分なりに吟味し、ムーブしていく。その様子はどこかゲーム感覚にあふれており、クリアした際はこれ以上ない笑顔を見せていた。思考と肉体をシンクロさせ、重力に反してひたすらに壁を登る。
これからも、奥深いこの競技の選手たちが、われわれを驚かせる瞬間から目を離すことができない。