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蜷川実花が撮るパラリンピアンの美。
「スポーツ写真に新しい角度を」
text by
山内宏泰Hiroyasu Yamauchi
photograph byMika Ninagawa
posted2018/01/30 08:00
印象に残る蜷川実花さんの作品の数々。彼女の新たな挑戦として、被写体にパラリンピアンを選んだ。
掲載されているのはファッション・シューティング。
願いはさっそく叶った。『GO Journal』0号の表紙と巻頭記事は、辻選手によって飾られることとなった。
「さすがはトップアスリート。被写体としての辻さんは、凜としていて本当にかっこよかった」
掲載されているのは、競技中の写真ではない。ハイレベルなファッション・シューティングだ。ヘアメイク、スタイリング、写真のテイスト。すべてにおいて洗練を極めたビジュアルが、何ページにもわたり展開されている。
「『なんかおしゃれじゃん』と目に留めてもらえれば」
「スポーツの世界って、おしゃれをしたりするのをあまりよしとしない風潮がまだ残っているイメージがあります。チャラチャラする暇があったらもっとトレーニングに打ち込め、というような。だから辻選手をファッションの流儀で撮影することにも、拒否感を抱く人はきっといるでしょう。
でも、それでいい。なんだか落ち着かない違和感を持ちながら、気になってつい手に取ってもらえたら何よりです。いったん見てもらえれば、こちらもすごく真剣にやっていることはきっと伝わると確信していますから。なぜこの衣装なのか。どうしてこんなライティングにして、こういうシチュエーションで撮っているのか。すべてを明確に説明できるビジュアルのつくり方をしてあります。そのためにアートディレクターやスタイリスト……。私が信頼する最高のチームを組んであります。
妥協は一切なし。『目新しいからちょっとパラアスリートに、ファッション分野へ出張してきてもらいました』などといった、半端な気持ちでやっているわけじゃないつもりなんですよ。そこまでやって初めて、『あれ、なんかおしゃれじゃん』と目に留めてもらえるものになると思う」