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蜷川実花が撮るパラリンピアンの美。
「スポーツ写真に新しい角度を」
posted2018/01/30 08:00
text by
山内宏泰Hiroyasu Yamauchi
photograph by
Mika Ninagawa
フリーマガジン『GO Journal』創刊。そこに込められた狙いを語り尽くした。
Number938号(2017年10月26日発売)から写真とともに全文掲載します!
小さいころから、スポーツはからっきしだった。体育の授業も休みがち。今も運動といえば、
「撮影でいつも身体を目いっぱい動かしているから、それで充分かなと自分に言い聞かせてますね……」
そんな写真家・蜷川実花が、パラリンピックやパラアスリートをテーマにしたフリーマガジン『GO Journal』をつくることとなった。
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の理事を務めているので、その関連の仕事かと思えばそうではない。日本財団パラリンピックサポートセンターからの、蜷川個人への依頼が始まりだった。聞けば、パラリンピックを盛り上げるメディアを立ち上げてほしいという。
「理事という立場があったからこそ名前を浮かべてもらえて、お声がけいただいた面はもちろんあるのでしょうね。興味深いし、ありがたいお話でした。やるなら『私にしかできないものにしたい!』と気持ちが燃えましたよ」
リオのメダリスト、辻沙絵を「ナンパ」した。
パラリンピックへの関心は、理事としてもちろん強く抱いていた。それに昨年には、多くのパラリンピアンと接する機会もあった。
「リオデジャネイロ・パラリンピックの解説を頼まれて、ブラジルを訪れました。そのとき、宿泊先が選手団と同じホテルだったんですね。朝食のビュッフェ会場で見渡すと、誰もが身体に欠損を持っていた。ああ一人ひとりが違う、だからいいんだ。世界はかくも多様だからおもしろいんだな。その光景から、理屈じゃなくそう体感することができました」
加えてリオへの旅行では、素敵な出会いもあった。空港で陸上競技のメダリスト、辻沙絵選手を「見初めた」のだ。
「荷物をピックアップしていたら、日本代表のジャージを着たすごくかわいい人がいた。税関を抜けるまでのあいだに、迷わず声をかけました。『蜷川と言います、いつか写真を撮らせてもらえませんか』って。ただのナンパですね(笑)。撮りたい! と直感した相手に直撃というのは、ふだんからよくやっていることなんです」