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長野五輪の施設が大幅赤字で休止。
3種目の運命、そして東京は大丈夫?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2018/01/23 08:00
長野五輪では多くの名場面を生んだスパイラルだが、その後の経営はバラ色ではなかった。
1968年以来の五輪不出場となった競技も。
一方で利用者は限られていたので、収支はつりあわなかった。
問題が表面化したのは、2016年の秋のことだ。施設の維持・管理にかかる負担額が年間約2億2000万円であることが明らかになったのである。そのうち1億円は国が負担していたが、それも2017年度までとなっていた。それから存続の可能性が議論され、休止が決まったのである。
「ここがなくなると、競技の今後にとって厳しくなると思います」と大向は語り、また同じくスケルトン五輪代表だった越和宏もかつて、「ボブスレー、リュージュにとっても、スパイラルは貴重な拠点なんです」と危機感を示していたが、それが現実となった形だ。
さかのぼれば建設時から、五輪後の経営を不安視する声はあった。競技人口の少なさが最大の理由だ。レジャー用のソリを用いて客を呼び込むなど活用手段を検討してはいたが実現せず、赤字を積み重ねてきた。
今回のスパイラル休止で、ボブスレー、リュージュ、スケルトンの3競技にとっては、強化・普及をどう図っていくか、会場の復活をいかに求めるかも含め、今後のプランを描くのには相当の知恵と行動力が求められることになる。
1972年の札幌五輪以来、連続で五輪に出場してきたボブスレーが、平昌五輪の出場枠を獲得できなかった状況も象徴的だ。
東京五輪のために作る会場はどうなる?
そしてスパイラルの問題は、競技施設の運営をあらためて考えさせる事件でもある。そもそも長野五輪・パラリンピックの会場の運営は、スパイラルだけが問題であったわけではない。
長野のために新設された6会場の建設費は、20年かけて返済された。また、維持管理費はスパイラルも含め、毎年約9億円ほどと言われている。スパイラルの赤字が縮小しても、維持管理費の負担は一定以上の規模で続いていくことになる。
2020年の東京五輪・パラリンピックにおいても、競技会場の行く末が議論されてきた。順調に運営していくことができれば当該競技の発展に寄与することができるし、運営が困難になれば、財産となれずに終わりかねない。
そういう面を考えても、大会後にどのように活用し運営していくのか、甘い見通しではなく厳しく捉えた上で、課題があれば打開策を打ち出さなければならない。
スパイラルの休止は、利用する3競技の未来に波紋を投げかける問題でもあり、競技施設運営の重要性をあらためて考えさせる契機でもある。