マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
野球の新練習法は冗談から生まれる。
外野の頭を越えたらグラブを外す?!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/12/19 07:00
現在も、野球がうまくなるための練習方法は新しいものが日々生まれている。ふとした思い付きから始まる革命もあるはずだ。
ネットに向かって投げたら、コントロールが劇的に改善。
さらに面白かったのは、“試し”がそこで終わらなかったことだ。
ならば、そのネットを捕手の前に置いたら投手はどう投げるのか? “試し”を1歩前に進めてみたという。
「キャッチャー、どうしようかなーと思ったんです。どうせ見えないんだから、いらないかなぁーって。でもね、そこが“キモ”だと思った。見えないけど、そこに実際にキャッチャーがミット構えてる現実っていうんですか。ネットの向こうにキャッチャーの姿を捉えて投げる。そいつのイメージの中でキャッチャーの姿を見て投げるのが、この遊びのキモだと思ったんでね」
ブルペンのホームベースのすぐ前に、シートをかぶったネットが置かれ、そのすぐ後ろに捕手がミットを構え、1球1球に気合を鼓舞する声も出す。
その状況でネットに向かって投げさせたら、投球フォームとコントロールが劇的に向上したという。
もちろん試した投手の全員が全員、技量が上がったわけじゃないらしい。それはそうだ。人間の感覚に問いかける方法というのは、合う、合わないがはっきり分かれる。
でも、それでいい。
そうした遊び心の中から救われる者が何人かでもいたら、それは素晴らしい「新理論」であろう。
「グラブが重くて邪魔だろうなぁ」という思いつき。
ひとしきり、なるほどねぇ……と感心した後に、今度はこちらからこんな問いかけをしてみた。
冗談に聞こえるだろうが、自分としては“大まじめ”に考えていたことだった。
この夏の甲子園。
例年の2倍ほどのホームランが左右に飛び交い、その流れで左中間、右中間を突破する打球も、外野手の頭上を越えていく打球も数えきれず飛んでいた。
ネット裏から試合を眺めていて、全力疾走で打球を追っかけていく外野手を見ていて、
「このクソ暑い中で、グラブが重くて邪魔だろうなぁ……」