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藤ヶ谷陽介に、脆さはもうなかった。
ガンバ黄金期を知るGKが遂に引退。
posted2017/12/02 07:00
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph by
Getty Images/J.LEAGUE
古くは本並健治や岡中勇人に始まり、現在では東口順昭ら数々の日本代表GKがガンバ大阪のゴールマウスに立ち続けて来た。
しかし、ガンバ大阪が二度とJ2に降格しないという前提付きではあるが、手にしたタイトルの種類においてこの男を超える守護神はクラブに現れないだろう。
藤ヶ谷陽介、36歳。プロ19年目のベテランは、今季限りでの現役引退が発表されている。
マンU時代のロナウド、南米王者とも対峙した男。
「フジ(藤ヶ谷)は多くのタイトルを取った時のGKなので思い出は多いですね」
と感慨深げに言葉を紡いだのは長年の僚友、遠藤保仁だ。藤ヶ谷は移籍1年目の2005年にクラブの悲願だったリーグ初制覇に貢献すると2008年のAFCチャンピオンズリーグ優勝も経験。そしてクラブ史上初のJ2降格の憂き目も見た翌年には、J2での優勝も味わった。
2008年のクラブワールドカップではマンチェスター・ユナイテッドのエースだったクリスティアーノ・ロナウドのシュートをガッチリと受け止め、2015年8月にはコパ・リベルタドーレス王者になったばかりのリーベルプレートとスルガ銀行チャンピオンシップで対戦。欧州と南米の大陸王者と対峙したGKは、Jリーグでは藤ヶ谷と鹿島アントラーズの曽ケ端準以外に存在しない。
国内の全タイトルとアジアを制した藤ヶ谷だったが、ジュビロ磐田から復帰した2015年以降、J1での出場はわずかに2試合。日本代表の常連となった東口の影に隠れ、その立場は常に第2GKであり続けた。
攻撃サッカーで頂点を極めた最初の黄金期でレギュラーだった男は言う。
「試合に出たいという思いはもちろん持っていたが、ヒガシ(東口)という絶対的な存在がいる。ガンバに戻って来ると決めた時点である程度、僕の中ではそれを受け入れて戻って来た」
「東口の代役」という立ち位置を受け止めながら、日々のトレーニングではGK陣の最年長として黙々と汗を流し続けた。