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藤ヶ谷陽介に、脆さはもうなかった。
ガンバ黄金期を知るGKが遂に引退。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byGetty Images/J.LEAGUE
posted2017/12/02 07:00
マンチェスター・ユナイテッドやリーベルプレートと戦った藤ヶ谷。その経験値こそ彼のかけがえのない財産だ。
現役ラストの最終節でピッチに立つ可能性が。
そんなプロ意識の塊のような男がキーパーグローブを脱ぐ。理由はシンプル。力の衰えではなく、モチベーションの問題である。
「チームから契約満了と言われたが、自分でもまだやれるという思いもあった一方で、また新しいチームを探して、新しい環境で1からやるという強い気持ちを持てなかったから」
明らかな守備陣のミスでピンチを招いた際にも過度に怒りを見せることなく、常に淡々とゴールマウスに立ち続けて来た仕事人は、やはり去り際まで控えめだ。
プロデビューした古巣でもある北海道コンサドーレ札幌戦(33節)を終えた後の一幕。
「今年で引退します」と報告した36歳に、薄々その退団を感じ取っていたという指揮官は「もっと早く言えよ。札幌戦の前に発表していれば最後、フジを使う事も出来たのに」
ガンバ大阪で国内外のタイトルを勝ち取り、J1からJ3まで全てのカテゴリーを経験した藤ヶ谷は、2日に行われるJ1最終節のFC東京戦で時間限定ではあるがピッチに立つ可能性が濃厚だ。
「ありがたいことだし、もし、最後そういう機会があれば、いい準備をしてやりたい」
いい準備をして、ただ出番を待つ――。「最強の第2GK」はプロ生活最後の試合でも、3年間繰り返して来たルーティンを変えるつもりは毛頭ない。