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宮原知子、五輪シーズンの決意。
自分を変える勇気が新しい強さに。 

text by

野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

PROFILE

photograph byAsami Enomoto

posted2017/11/10 08:00

宮原知子、五輪シーズンの決意。自分を変える勇気が新しい強さに。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

「SAYURIを選んだのは運命だったんだな」

 一方、氷上練習ができないぶん、プログラム選びに時間を使った。自ら英語で、カナダと米国の振付師に連絡をとって、詳細なやりとりをする。ショートは映画『SAYURI』の曲で、ひとりの男性を思い続ける芸者の物語。フリーは『蝶々夫人』で、夫を待ち焦がれるオペラだ。

「最初は、両方とも和風はかぶると思ったけれど、作ってみたら雰囲気が違うのが出来たので、これで行こうと思いました」

 そしてある日、宮原は自宅の書棚で嬉しい再会を果たす。12年前、米国に住んでいたころに友人の母親が貸してくれた『SAYURI』の原著があったのだ。宮原は、夢中で読み始めた。

「SAYURIを選んだのは運命だったんだな、と思いました。ストーリーは大事ですね。主人公が1つのことを突き詰めてそれを貫くというところが、自分のスケートに対する気持ちと一緒だなと思って共感しています。蝶々夫人もテーマが似ていますが、さらに大人っぽい感じ。どちらのストーリーも、プログラムに自分が自然に溶け込める感じです」

自分を変える勇気が、新しい強さになる。

 5月に氷上練習を再開した。これまでは人一倍の練習量を自信に変えてきたタイプだが、リハビリ明けの今季は、練習量に頼ることも、多くの試合に出て慣れることも出来ない。初戦は、他の選手より約2カ月遅い、11月のNHK杯になった。

「試合をたくさんこなした方が安心感はあるけれど、今は身体が壊れる方が嫌なので、思い切って1試合に賭けることが必要になります。まずは初戦のNHK杯に向けて、どこまで自分を強く持っていけるか。自分の過去の映像を観て、名前を呼ばれてシーンとする場面を思い出してイメージトレーニングをしています。初戦を乗り越えれば成長できるんじゃないかと思います」

 オリンピックの日本代表は2枠。GPシリーズの結果も重要だが、12月末の全日本選手権で優勝すれば確定する。

「今までよりも、全日本選手権に賭けるという強い気持ちが今年は必要だと思います。私は、練習したことを本番で出せる、いえ、出す選手だと思います。絶対にノーミス(で演技)したい気持ちは、誰よりも持っているから。だからオリンピックに行きたいという願いよりも『自分の出来ることをしっかり出す』という気持ちが強いです」

 子供の頃から嫌いだった牛乳を、毎晩夕飯に飲むようになった。

「リハビリ中に体重を4kg増やしたおかげで、筋肉量も増えました。怪我を経験したことで、気持ちの面も体格も、自分が力強く変わった感じがあります。今年はたくさん食べて、そのぶん動いています」

 自分を変える勇気、それが彼女の新しい強さになる。

(Number938号『宮原知子 自分を変える勇気。』より)

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