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宮原知子、五輪シーズンの決意。
自分を変える勇気が新しい強さに。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2017/11/10 08:00
19歳の誕生日を迎え、気持ちはリハビリに。
3月26日に19歳の誕生日を迎えると、気持ちを切り替えた。本格的なリハビリのため、東京都北区にある国立スポーツ科学センター(JISS)で合宿を開始。世界選手権はJISSのテレビで観た。
「リハビリが始まったらもう吹っ切れていたので、悔しいという気持ちはなかったです。むしろ皆が良い演技をしてくれたらいいなと、応援していました。自分の思いを託す感じでした」
JISSでは、電気治療のほか、筋力アップや股関節の動かし方を変えるトレーニングなど、あらゆる科学的なリハビリが準備されている。宮原は情熱のやり場を、リハビリに集中させた。
そして大きな変化が現れたのは、食事だった。JISSの食堂はビュッフェ形式で、小皿ごとに栄養素やカロリーが表示されている。管理栄養士も常駐しており、勉強しながら自分の食事を選べる。例えばシンクロナイズドスイミングの選手なら炭水化物を中心にカロリーを多く、格闘技の選手はたんぱく質を積極的にとる、など。
フィギュア選手は太ってはいけない先入観もあったが。
宮原は、骨密度を上げ、また筋肉量を増やすために、栄養もカロリーもとらなければならない。フィギュアスケート選手は太ってはいけないという先入観があったが、ラグビー選手の大食漢達に刺激された。
「お医者さんから『食べろ』と言われていました。でも最初は、あまり練習してないのに、こんなに食べていいのかなと罪悪感があったんです。体重を増やす勇気がなくて、食べた後はサウナに入って気持ちを紛らわして……。でも最後は諦めて、気にせずたくさん食べました」
まずは栄養をとって骨を強くする。脂肪が増えれば、筋肉量も増やせる。そう思って体重を増やしていくと、身長まで伸びたのだ。リハビリで落ち込むどころか、宮原の顔からは笑顔が溢れていた。
「リハビリしている間に、他の競技の友達がたくさん出来ました。サッカー、新体操、陸上、レスリング、卓球、テニス……。皆が明るくて『リハビリはキツくても皆がいるから頑張れるね』と言い合える仲間でした。JISSから京都に帰ってきた時は、明るさをもらって来た感じでした」