“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
高卒1年目18歳にして鹿島の切り札。
安部裕葵が持つ「柔軟性ある芯」。
posted2017/11/09 16:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
鹿島アントラーズのルーキー・安部裕葵には「男の流儀」がある。
今年、瀬戸内高校から鹿島に入団した安部は、川崎フロンターレとの優勝争いを繰り広げているチームにおいて、ルーキーながら出番を掴み、キレのあるドリブルと相手を嘲笑うようなトリッキーなパスで、途中出場から流れを変える存在として重宝されている。
一方で、1999年1月28日生まれの彼は、次のU-20W杯を目指すU-18日本代表の対象年齢でもあるため、11月4日から8日までモンゴルで開催されていたAFC U-19選手権予選にU-18日本代表の一員として参加。コンディション面を考慮して、出場時間こそ短かったが、第2戦のシンガポール戦、最終戦のタイ戦に途中出場し、3連勝で来年のAFC U-19選手権出場権を手にした。
プロ1年目でいきなり鹿島の注目選手になった18歳。
鹿島に年代別代表にと、これからの彼はより忙しくなることは必至で、さらに注目を浴びていくことだろう。だが、注目度が増していく中で、安部本人は至って冷静だ。
「周りから『順調だね』と言われますけど、スタメンで出たジュビロ磐田戦も0-3で負けていますし、決して順調だと思っていません。それに1年目が良いからと言って、将来が決まった訳じゃない。1年目が良くても、2年目、3年目で出られない選手も沢山いるし、自分もそうなる可能性はあると思います。
先のことは今考えても分かることではないので、とりあえずその日の練習、次の日の練習をやることしか考えていません」
モンゴルに旅立つ直前の成田空港で話を聞いた時、彼は今の自分をこう分析し、浮ついた気持ちは一切無いことを感じさせてくれた。
高校時代は無名の存在と言ってよかった彼が、強豪・鹿島においてルーキーとは思えない堂々たるプレーぶり、そしてこうした冷静な受け答えをする姿に、多くの人が驚いたことだろう。
もしかしたらそんな彼のキャリアを「シンデレラストーリー」と呼ぶ人がいるかもしれない。
しかし彼がずっと歩んで来た道は、分かりやすいエリート街道や栄光の道などではなく、高校時代から変わらない「日々の練習」という地味な道程だったのだ。