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筒香嘉智がついに「何とかした」。
普段はポーカーフェイスの男が……。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2017/11/03 12:40

筒香嘉智がついに「何とかした」。普段はポーカーフェイスの男が……。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

やはり、筒香嘉智が打つことはDeNAにとって大きな意味がある。苦しんだ福岡で、今度はどんな戦いを見せてくれるだろうか。

18打席目で出た、自分のスイングとホームラン。

 一方の筒香は、ソフトバンク先発のリック・バンデンハークのキレキレの立ち上がりに2回の第1打席は空振り三振を喫した。しかし1点を追う4回2死二塁、待望の一発が飛び出した。

 カウント1ボール1ストライクからの3球目。バンデンハークの153キロのストレートを、逆らわずに左手で長いフォローを作ってバックスクリーン左へ運んだ。

「ホームランは意識していませんでしたけど、自分のスイングでうまく押し込むことができた」

 シリーズ通算18打席目で、ようやく飛び出した待望の1号だった。3つのベースを蹴ってホームに戻った筒香は、両手を広げて一塁ベンチで待つナインとハイタッチを繰り返した。

 そして「決める4番」としての仕事は、これだけでは終わらなかった。

 5回には石田が逆転を許した。デスパイネの犠飛で同点に追いつかれた2死から、内川にしぶとく左前安打でつながれ、中村の勝ち越し2ランを浴びたのだ。その裏には先頭の戸柱恭孝の二遊間を破ろうかという当たりを今宮が、また2死二塁から倉本寿彦の三塁線を破ろうかという当たりを松田宣浩が、それぞれファインプレーでいずれも阻止した。

 まさにソフトバンクにいきかけた流れを、主砲の一撃が再び引き戻した。

「全員でつないで、つないで点を取ったのが嬉しい」

 2点を追う6回の攻撃だ。

 先頭の桑原が三遊間を破って出塁すると、2番・柴田の3球目に二盗。柴田は投ゴロに倒れたが、ロペスが歩いた一、二塁で打席に筒香を迎えると、ソフトバンクベンチが動いた。先発のバンデンハークを諦めて左腕のリバン・モイネロを当ててきたのだ。

 だが、その継投は失敗に終わった。カウント2ボール1ストライクからの4球目。真ん中に入ってきたチェンジアップを、筒香が再び逆らわずに打ち返した。一瞬センターフライかと思わせる低い弾道だったが、そこから伸びる。必死に追いかけた柳田の頭上を越えて中堅フェンスを直撃した打球が、グラウンドに弾んだ。これで1点差。

 さらに5番の宮崎敏郎の中前適時打で追いつくと、最後は代打・嶺井博希の二塁へのゴロに併殺を焦った二塁手の明石健志が、これをファンブル。その間に筒香がホームを駆け抜けた。

「全員で勝ち取った勝利だと思います。全員でつないで、つないで点を取った。ホームランより嬉しかった」

 決勝のホームを踏んだ直後に、普段はポーカーフェイスの男が珍しく両手を掲げて万歳を見せた。抑えていた感情の爆発だった。ようやく仕事ができた喜びだった。

【次ページ】 ラミレス監督も「まさに4番の仕事をしてくれた」。

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