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大学4年秋に化けたドラフト候補。
サブマリン高橋礼は緩急の名人だ!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/10/20 08:00
下級生時代から全国の舞台を経験してきた高橋。打者を幻惑するサブマリンには今もなお“需要”はある。
ジワッ~としたモーションから一転、クイック。
ジワッ~と時間をかけてモーションを作って、一転、クイックのリズムで投げ込んでくる。
モーションの緩急がまず初めにあって、そのあとに、球種の緩急が来る。ふた通りの緩急で、打者のタイミングを完全に崩してくる。
この秋、高橋礼のボールを、東都の打者たちが打ちにくそうにしているのを久しぶりに見た。
彼が1年生の頃は、天然の緩急。天然の打ちにくさだった。
そして、今。彼が何度も痛い目に遭った末に、ようやくたどり着いた“技術”としての緩急だ。
考え、悩み、いろいろに試して、やっと「これかな……?」と気がついた努力の結晶でもあろう。すぐに覚えたことは忘れるのもあっという間だが、時間をかけて覚えたことは一生忘れない。
ぜひ、そうあってほしいと願う。
ボールを長~く持って、打者を悩ませてみよう。
オーバーハンドのような150kmを超える剛速球とか、目にも止まらないような高速フォークに高速カットは、投げたくてもなかなか難しいのがアンダーハンドの“弱み”だが、反面、そこまで速いボールを投げられないのなら、せいぜいボールを長~く持って、なかなかボールを放さないことで打者を悩ませてみよう。そこが、アンダーハンド最大のアドバンテージだろう。
ボールと時間を支配できるのがピッチャーの特権だ。
そのことに気づいたのが、怪腕・牧田和久(西武)の出発点だったと、私は推測している。
だから、速球とスライダーとシンカーしか球種はなくても、その速球のスピードに何通りものバリエーションをつけて、打者にわからないようにタイミングを外して打ち損じの山を築く。
そんな芸術的投球に到達できたのではないか。
1年生当時、高橋礼と共に「学生ジャパン」の候補に挙げられていた、もう1人の長身サイドスロー・井手亮太郎(九州産業大)。
しなやかな腕の振りのスピード抜群のこの逸材の復活も、私は心から待ち望んでいる。