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池田純に「Number」編集長が聞いた!
球団を5年間で黒字化できた要因とは。 

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松井一晃(Number編集長)

松井一晃(Number編集長)Kazuaki Matsui

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posted2017/10/02 17:30

池田純に「Number」編集長が聞いた!球団を5年間で黒字化できた要因とは。<Number Web> photograph by SUNNY SIDE UP

プロ野球界で、本当に黒字の球団は少ない!?

――親会社から広告費名目で“損失補填”されている球団も多いですしね。

「サッカーでも野球でも、ユニフォームにつくスポンサーはだいたい年間1億円前後の値段をつけているチームが多いと思われます。ただ、そこに親会社が仮に9億円出している球団があれば――まあ値段を決めるのは当事者なので妥当な額と言われてしまえば妥当なんですけど――それでも黒字と言えば黒字になります。実際の収支を全部つまびらかにしている球団はあまりないので、本当に黒字の球団は少ないです」

――でも、池田さんにはその黒字を実現できる自信があった?

「いや、なかったです(笑)。ただ、私は球団経営とは第一に人を集めるビジネスだと考えました。そのためには、人を楽しませます、広告も必要です、面白くしなきゃいけないです……。そう考えると、最初に申し上げたように、横浜スタジアムは1978年の竣工以来ほとんど変わっていない。ハードが変わっていないからこそ、そこに勝機はあるんではないかと。最終的にはスタジアムを買収するしかないだろうなとイメージしていました。さすがに実現できるかどうかは未知数でしたが」

地域に対する5年間の努力が実ってスタジアム買収実現。

――スタジアムの買収を最初から目指していたんですね。

「スタジアムに来る人の1人あたりのチケットの単価って、プロ野球はだいたい2000円台ぐらいなんですよ。それを3000円台までもっていけたとしても、ホームゲーム試合数は72。そこにグッズの単価をプラスして、72試合全部満員になったと仮定しても、ぎりぎり黒字になるかならないか。さらに、チームが強くなれば選手の人件費も上がってくることを考えると、これはもう根本的に変えなきゃダメ。だから、スタジアムを買収して球団との一体経営に持っていかないと未来がないと。最終的にそれが実現できたのは、5年間の努力が地域の方々に受け入れられ、信頼を勝ち取ったからだと思います」

――就任から5年間で黒字化を達成できた要因は何だと思いますか。

「スポーツビジネスを『スポーツエンタテインメント』ビジネスに変えたことだと思います。『野球を“つまみ”に楽しめるスタジアムを作る』と言うと、当初は『野球は勝ち負けが最大のファンサービスであり、勝たない限りは黒字にならないし、お客さんはスタジアムに来ない』と、よく新聞記者や関係者から叩かれました。もちろん、球団にとって一番重要な商品は野球です。ただ、それをより面白く、より居心地の良い空間で見られれば、より満足度は上がる。極論すれば、たとえチームが弱くても、スタジアムとその空間に魅力があればお客さまは増やせる。そういうお客さまが作り出す雰囲気がチームをさらに強くしてくれる。だから、スポーツエンタテインメントビジネスとして、お客さまを喜ばせるためにできることすべてを私は追求したのです」

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池田純
横浜DeNAベイスターズ

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