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天皇杯Jクラブ敗退は波乱じゃない?
国内3冠で最も難関タイトルな理由。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKyodo News
posted2017/08/01 07:00
メディアでは“格下”に負けるJリーグ勢とセンセーショナルに書き立てられるが、トーナメント制ならではの難しさがあるのだ。
シーズンが深まるにつれてリーグ戦の重要度が増す。
一発勝負のカップ戦は、格上クラブにシビアだ。
かつてのJSLや現在のJクラブは、勝って当然という認識に包まれてピッチに立つ。全身を縄で縛られているかのようなメンタリティだろう。それに対して格下チームは、失うものがない。過度の緊張に襲われることがなく、伸び伸びとプレーできる。
天皇杯に出場するJクラブには、心の重りがもうひとつあるのではないか。
J1のリーグ優勝やACL出場を狙うにせよ、J1残留やJ1昇格を目ざすにせよ、シーズンが深まるにつれてリーグ戦の重要度が増していく。万全のコンディションと準備でリーグ戦を迎えたいと考えるのは、各クラブに共通する思いに違いない。天皇杯を軽視しているわけではないが、それ以上に獲り逃してはいけないものがJクラブにはある、というのが率直なところではないだろうか。
「天皇杯で負けたチームからオフになる」歪みの解消を。
とはいえ、Jクラブに前向きな変化もある。
J1リーグが2ステージ制だった昨年、一昨年の天皇杯は、4回戦終了後に1カ月以上のインターバルがあった。J1リーグのチャンピオンシップ(CS)とクラブW杯があったためである。天皇杯で準々決勝まで勝ち残りつつもCSに無関係のクラブは、シーズンオフに突入したクラブをうらやましく眺めながらトレーニングを続けざるを得なかった。
シーズンオフ突入の足並みが揃わない不均衡は、緩やかではあるものの是正された。今シーズンのJ1は12月2日が最終週となっており、この時点で天皇杯は準々決勝が終わっている。ベスト4入りすれば、チーム強化費という名の賞金を得ることも決まっている。優勝すれば1億5000万、準優勝なら5000万円を獲得できる、3位にも2000万円が支給される。シーズン終了が先延ばしになっても頑張れる価値を、はっきりと見出すことができるわけだ。
天皇杯決勝を元日に行なうことを恒例とし、Jリーグのシーズンが春秋制である以上、「天皇杯で負けたチームからオフになる」という歪みは解消されない。それが大会序盤の波乱の導火線になっているとしても、大切なのは最終的な着地点を間違わないことだろう。