猛牛のささやきBACK NUMBER
ダルに「一番だわ」と言わしめた男。
1年目・山岡泰輔が既にエースの気配。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2017/07/15 07:00
172cmの体で150kmのストレートを投げる山岡泰輔。監督推薦でのオールスター出場も納得できるものだ。
「だってもう終わっちゃったっすもん」
それも切り替えるためのひとつの手段だ。失投の結果を再現して反省したら、振り返るのは終わり。次の瞬間には次打者のことを考えている。
「反省はしますけど、引きずりはしないです。だってもう終わっちゃったっすもん。打たれたからって、『あー』って沈むことはないです。『なんであそこに投げちゃったんだ』とか『あれを投げとけばよかった』と思っても、どうやったってそこには戻れないんでね。同じミスをしないということしかできないじゃないですか」
切り替えの速さやポジティブ思考は、気づいた時には備わっていた性格だと言う。
ダルビッシュに「一番だわ」と言わしめた高3の夏。
山岡の名が世間に広く知られたのは、今から4年前。瀬戸内高校3年の夏だった。山岡は、広島県大会決勝で広島新庄高校のエース田口麗斗(現巨人)と投げ合い、延長15回0-0の引き分けで再試合となった。そして山岡は再試合も0点に抑え、1-0で勝利し甲子園出場を勝ち取った。
甲子園では初戦敗退となったが、山岡の映像を見たダルビッシュ有(レンジャーズ)が「これは一番だわと思いました」とツイッターでつぶやいたことで注目が集まった。
「嬉しかったですけど……それを自分のプレッシャーにしながらやりました。見る目がなかったって思わせたくないなという気持ちがあったので。そう言ってもらったからにはやらないといけないという、いいプレッシャーの方に持っていくことができました」
高校卒業後は社会人野球の東京ガスで、課題と捉えていたストレートを磨いた。そして昨年秋、ドラフト1位でオリックスに指名され、1年目から先発ローテーションを任された。
特に前半戦最後の2試合、8回2安打0失点で3勝目を挙げた6月30日の西武戦と、8回4安打1失点だった7月7日のロッテ戦の投球は、すごみを増していた。
ストレートが走り、プロ入り後の最速150キロをマーク。変化球も、もともと自信を持っていたスライダーに加えてチェンジアップが冴え、身長172cmの小柄な体が大きく見える躍動感と貫禄があった。