ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
丸山茂樹の元キャディが名解説者に。
ジャンボに言われた「仕事を取るな」。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2017/06/29 07:30
松山に話を聞く杉澤。取材対象者が自然と笑顔になるのもキャディ出身の“杉ちゃん”ならではだ。
キャディも「本気」を求められる場所だからこそ。
ボールを打つ技術でプロゴルファーに敵わないことは百も承知だ。ただし、自負もある。
杉澤には忘れられない夜がある。
丸山に引っ張られる形で米国に渡った'02年はじめのこと。元々は前の外国人キャディが辞めたことによる“つなぎ役”のはずだった。開幕から成績が振るわず、杉澤も早々にクビを切られる覚悟ができていた。
しかし、である。「丸山さんは日本の宝。俺じゃダメだ」「でも、やっぱり続けたい」。交互に入れ替わる思いは、悩んだ末に後者が勝った。
フラれたら仕方がない。でも、一大決心を伝えなくてはいけない。2月のアリゾナ。顔を見ては言えなかった。だから丸山の背中をマッサージしているときに言った。「アメリカでキャディを続けさせてください」
しばしの沈黙の後、丸山は「遅いよ」とつぶやき、続けた。「気づくのが遅い。俺は杉ちゃんが本気になるのを待ってた。PGAツアーはキャディも本気にならないと戦えない。ここは、そういう場所だから」
多くの日本人選手が挑戦してきた米ツアー。そのレベルはいまも最高峰にあるが、その魅力を伝えることは容易くない。しかし近年は、丸山や、同じ場所で戦った田中秀道らが解説陣に加わり、より現場に近い情報が提供されるようになってきた。
そして杉澤もまた「本気」を求められるその場所を知る、数少ない人材のひとりである。
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