炎の一筆入魂BACK NUMBER
広島・岡田明丈のマイペース伝説。
2年目に変えたフォーム、不変の芯。
posted2017/04/27 07:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Kyodo News
人は、そう簡単に変われない。
桜の花も散り、季節が春から夏へと移り変わろうとしている。今春、新社会人となった若者は慣れない世界で壁にぶつかり、こんなはずじゃなかったと嘆いているかもしれない。
広島の岡田明丈も1年目は、同じように模索していたのだろうか。だが、2年目の春を迎え、もっぱら「岡田は変わった」と評判だ。
まず“見た目”が変わった。
昨季終了とともに、投球フォームを矯正。確かに肩のラインの上下動を最小限にとどめ、制球難の課題克服に着手した。また、チームメートの沢村賞クリス・ジョンソンを参考に、踏み出した左足の着地後にコンマ数秒の間をつくる動きも追求した。
“見た目”の変化を可能にしたのは、内面の変化かもしれない。
「自分のペースを崩されるのは嫌なんです」
岡田の性格は、人見知りでマイペース。プロ入り前は自分の投球のことよりも、新しくチームメートになる先輩との付き合い方に不安を感じていた。
「あまり人に合わせるのは好きじゃない。自分のペースを崩されるのは嫌なんです」
思わず苦笑い。
もう時効だろう――。
1年目の春季キャンプのある日。バスの出発時刻ギリギリに宿舎入り口に出てきた岡田の前に、バスはもういなかったことがある。広島では10分前行動は当たり前。出発の15分前にはほぼ全員が集まっている“広島タイム”がある。
そこに新人が遅刻したのだ。
また昨季序盤の先発時には、キャッチボールで肩を温めるタイミングになっても、チームメートと話をし、コーチから促されて慌ててグラブを手にベンチを出ることもあった。
初めて登板するクライマックス・シリーズ第4戦の日には、試合前に本拠地マツダスタジアム前のコンビニで買い物する姿があった。
すでにユニホームを着たファンも数人いる中に先発投手が一緒に買い物カゴを持つ光景は微笑ましかった。