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今年の牡馬が弱い、は間違いだった。
皐月賞をレコードでアルアインが制覇。
posted2017/04/17 11:20
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
クラシック三冠競走の第一弾、第77回皐月賞(4月16日、中山芝2000m、3歳GI)は好天のもと良馬場で行われ、松山弘平が騎乗した9番人気のアルアイン(牡、父ディープインパクト、栗東・池江泰寿厩舎)が制した。
勝ちタイムの1分57秒8は、昨年のディーマジェスティの記録をコンマ1秒上回るレースレコードで、コースレコードタイ。2着は同じ池江厩舎のペルシアンナイト、3着は12番人気のダンビュライト。1番人気に支持された牝馬のファンディーナは7着に終わった。
速すぎもせず、遅すぎもしない流れを好位から追いかけたアルアインが、直線、馬群の内から力強く抜け出した。検量室前に戻った松山は、勝負服の袖で涙を拭い、笑顔を見せた。
「スタートがよかったので、いいポジションをとることができました。好位につけて、人気馬を見ながら流れに乗ることができた。3、4コーナーの馬場の悪いところで脚をとられても、直線ではしっかり伸びてくれました」
「乗れる若手」が皐月賞初騎乗で初GI勝利。
デビュー9年目の27歳。2012年にスマートギアで中日新聞杯を勝ち、重賞初制覇を遂げると、ドリームバレンチノで函館スプリントステークスを制し、その年関西リーディング7位となる74勝を挙げた。
さらに昨年はミッキーアイルで阪急杯、クルーガーでマイラーズカップを優勝。もともと「乗れる若手」として関係者に腕を買われていたのだが、皐月賞初騎乗にして、見事、GI初勝利の大仕事をやってのけた。
「これまでもチャンスのある馬に乗せてもらっていましたが、去年もGIでは2着が2回(高松宮記念、スプリンターズステークス)で、早く勝ちたいと思っていたので、よかったです。今年の皐月賞は、どの馬が勝ってもおかしくない混戦で、調教の動きがよかったので、十分通用すると思っていました。ただ、馬はしっかり走ってくれたのですが、人間が必死になって、少しヨレたことに悔いが残ります」
ひとつひとつの言葉を丁寧に選び、真剣な表情で語った。自身が小学校6年生のときに亡くなった父方の祖父が競馬ファンで、騎手を目指すきっかけとなった。38度目のJRA・GI挑戦で、天国に贈り物を届けることができた。